結婚式場の自社集客とは? 自社サイトの予約数ではなく「指名」で測るのがポイント

こんにちは、アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
ここ数年で「自社集客の強化」を掲げる結婚式場が増加しています。結婚する人の数も披露宴を行う割合も減り続け、媒体に掲載していれば一定の来館が見込めた時代が終わりつつある以上、自力で選ばれる力をつけようとする動きは自然な流れです。一方で、各社の集客担当の方と数字の話をしていると、同じ「自社集客」という言葉でも指している中身が会社によって違い、何を成果とみなすかが揃っていないことも少なくありません。
今回は、結婚式場の自社集客をどう定義し、何で測り、どう運用に乗せるかを整理します。
結婚式場の自社集客とは、会場名で指名される状態をつくること
結婚式場の自社集客とは、式場を探すカップルが最初から会場名を挙げて問い合わせてくる状態をつくることだと考えています。どのサイトから予約されているかが重要なのではなく、カップルが検討の途中で「この会場を見に行きたい」と名前で選ばれているかどうかです。
名前で検索される量をブランド力の物差しにする考え方は、田部正樹さん著の書籍『ブランド力を高める「指名検索」マーケティング』が体系的にまとめていて、式場の自社集客を考えるうえでも参考になるので、興味があればご覧ください。
ところが実際の運用を見ると、公式サイト経由のフェア予約件数を自社集客のKPIに置き、その件数を伸ばすためにSNS広告や検索広告の出稿を増やす、という組み立てになっている会場が多い印象です。
これは担当者個人の問題というより業界の集客の歴史に起因するもので、集客の大半を媒体が担ってきた期間が長かったぶん、媒体への出稿以外で顧客を集める知見を持つ人が社内にも業界内で育ちにくく、言葉の定義を詰める前に「自社集客」というキャッチコピーだけが独り歩きしてしまったのだと思います。
自社サイトの予約数だけでは、媒体依存から抜け出せたかは分からない
SNS広告や検索広告も自社サイトの改善も、それ自体は有効な施策ですし、予約が伸びているなら成果の1つです。ただ、予算を投じている間だけ流入があり、止めれば途絶えるという点では媒体の掲載費とお金の性質は同じで、変わったのは費用の支払先と予約フォームの場所くらい、というケースも少なくありません。脱媒体を掲げていたのに、気づけば依存する相手が媒体からmetaやGoogleなどの広告プラットフォームに入れ替わっていた、ということが起こり得るのです。
お金で接点を買う経路と時間をかけて資産を育てる経路の違いは結婚式場の集客経路の全体像の解説記事で整理していますし、最後に予約された経路だけで成果を判断すると、手前で認知や関心をつくった経路の貢献が見えなくなることは広告宣伝費と獲得単価の解説記事でも書きましたが、予約の窓口で自社集客を測るやり方は、これと同じ落とし穴にはまりやすいのです。
予約の窓口と指名されているかは一致しない
たとえば、友人の結婚式に列席してその会場を気に入り、後日Instagramで施行写真を見返したり公式サイトで料金を確かめたりして見学を決めたカップルが、使い慣れたゼクシィのアプリからフェアを予約したとします。数字の上では媒体経由の1件ですが、会場名で選ばれて来館している以上、中身は自社集客の成果そのものだと言えます。
反対に、スマートフォンに表示された来館特典つきのフェア広告をタップし、会場名もよく覚えないまま公式サイトのフォームから申し込んだ場合は、数字の上では自社サイト経由でも、会場を名前で選んだとは言えないでしょう。特典や値引きを前面に出した広告ほど、会場そのものより条件で選ばれやすいので、予約数は増えても指名にはつながりにくい傾向があります。
あともう1つ、ゼクシィなびのようなエージェント系サービスからの送客の場合は、カウンターでは顧客は条件に合う複数の会場の中の1つとして案内を受けるので、この経路からの予約は明確に指名ではないことが多いと言えます。
つまり、予約の窓口が自社か媒体かという軸と、指名されているかという軸は別物で、自社集客を評価するなら測るべきは後者なのです。

指名されているかを測る4つの指標
何を指名の物差しにするかは会場の立地や取り組みによって変わるので、汎用的な正解はありません。それでも、予約フォームの場所ではなく「会場が名前で選ばれているか」を数字で追えることは、KPIを選ぶときに外せない条件だと考えています。
会場名での検索の表示回数(Googleサーチコンソール)
主指標に置きたいのが、Googleサーチコンソールで見る会場名やブランド名での検索の表示回数です。会場名で検索する人はすでにその会場を候補として意識している人なので、この表示回数の推移がそのまま指名の量の目安になります。見るべきはクリック数ではなく表示回数で、というのも、会場名で検索したあとに媒体の会場ページへ進まれるとクリックは自社サイトに残りませんが、指名で検索されていれば自社サイトはほぼ1〜3位に表示されているはずなので、表示回数には変化が表れるからです。式場のSEOで指名検索をどう位置づけるかは式場集客のSEOとAIO対策の解説記事で整理しています。Googleトレンドでも会場名の検索動向は見られますが、数値が相対値で、検索数の少ない会場だと推移が荒れたりデータが表示されなかったりするので、補助として使うくらいがちょうどいいと思います。
Instagramのプロフィール閲覧数
SNSにしっかり取り組んでいる会場であれば、Instagramのインサイトで見られるプロフィールの閲覧数の推移も目安になります。投稿を見た人がわざわざ会場のアカウントを見に来ている数なので、指名の手前にある関心の深まりを追うことができます。SNS運用そのものの設計は結婚式場のSNS集客の設計と運用の解説記事をご覧ください。
来館時のアンケート
来館時のアンケートで、最初に会場を知ったきっかけや、ほかに見学する予定の会場数などを聞いておけば、指名で来たのか比較の中で来たのかを来館者ベースで集計できます。回答の精度には限界がありますが、定量で集計できる手段として一定の効果はあります。
予約経路の構成比
予約経路の構成比は、読み方に注意が必要です。指名が増えると結果として自社サイトからの予約の割合は上がっていきますが、この比率は広告を強めるだけでも上がるので、会場名での検索の表示回数とセットで読むことが大切です。逆に、エージェント系サービスからの送客比率が高い状態は、比較の中の候補として選ばれている割合が高い、つまり指名が少ないサインと読めます。
なお、媒体経由の予約比率は掲載媒体の仕組みと付き合い方の解説記事で媒体依存度の指標として紹介しましたが、この記事での記載は媒体側の値上げや制度変更に対するコスト構造の弱さを測るもので、指名を測る指標とは役割が違います。

指名の指標を運用に乗せる手順と、経営層との時間軸合わせ
指標を決めても、運用に乗らなければ数字を眺めて終わってしまいます。進め方は、次の順番が現実的だと思います。
- 何の数値をモニタリングするかを決める
- その数値を、誰が・いつ・どのように取得するかのモニタリングフローを決める
- 数値がどう変化したら何をするか、打ち手の候補をあらかじめ洗い出しておく
- 施策を計画どおりに実行できる体制と、担当者の評価指標を整える
- あとはとにかく高速に実行する
3つ目までを先に決めておくのは、数字が動いたときに「で、何をするのか」で止まらないためです。4つ目も見落とされがちで、指名の指標を追う担当者が今月の来館数だけで評価されていれば、どうしても目先の予約を取りに行く施策に寄っていってしまいます。
そして、成果が見えるまでの期間を経営層と先にすり合わせておくことも重要です。コンテンツの蓄積やアカウントの育成は手応えが出るまで1年単位で考える必要があり、しかも結婚式は問い合わせから施行・売上の計上までにさらに半年から1年かかるので、今期に始めた取り組みが今期の決算に表れることはまずなく、費用だけが先に計上されます。
加えて、会場名での検索の表示回数やプロフィールの閲覧数は、来館より2ステップほど手前にある数字なので、マーケティングにある程度明るくないと、その変化を成果として実感しにくく、投資の判断をしてもらえないことが多いのが実情と言えます。
そのため、最初の段階で「数字に表れるのは来期以降になる」と明言しておき、そのうえで来館の手前にある数字の動きを定期的に共有し続けることが大切だと思います。予算も一度に組み替える必要はなく、当面の来館数は媒体と広告で確保したまま、その費用の5〜10%程度を会場名で選ばれるための取り組みに充て、手応えを見ながら翌期以降に配分を調整するのがよいでしょう。
まとめ
公式サイト経由の予約が伸びていても、それが広告費で買った接点であれば、媒体に頼っていた頃と集客の構造は変わっていないかもしれません。結婚式場の自社集客は会場名で選ばれる状態をつくることであり、その成否は予約フォームの場所ではなく、指名の量で確かめる必要があります。
だからこそ、会場名での検索の表示回数やプロフィールの閲覧数、来館アンケートといった指名を表す数字をKPIに置き、取得のフローと打ち手、実行の体制まで決めたうえで、成果が出るまでの時間軸を経営層と揃えておく。まずは自社にとっての「自社集客の成功」を、言葉と数字の両方で決めるところから始めてみてください。
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