結婚式場の一貫担当制(一顧客一担当制)と分業制の違い

こんにちは、アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
同じ「ウェディングプランナー」という肩書でも、式場によって仕事の範囲は大きく違います。新規接客から結婚式当日まで一人で担当する式場もあれば、営業と打合せ担当が完全に分かれている式場もある。いわゆる一貫担当制と分業制の違いです。
業界の中で働いている人でも、自分が経験してきた制度のことしか知らず、もう一方の制度についてはイメージで語ってしまっていることが意外と多いと感じています。今回は、結婚式場の担当制度の仕組みと、なぜ式場によって採用するモデルが違うのか、そして業務委託プランナーがこの組織モデルにどう関わるのかまでを整理します。
結婚式の業務プロセスと担当制度の全体像
結婚式場のプランナー業務は、大きく3つに分解できます。
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新規接客:
ブライダルフェアや見学に来館したカップルの対応から成約まで。1組あたり3時間前後の商談 -
打合せ:
成約後、挙式までの約半年間で料理・衣裳・演出などを決めていく工程。1回3時間前後の打合せを4回程度 - 施行当日: 結婚式当日の運営。進行管理と関係セクションへの指示出し
プランナーの担当制度とは、要するに「この工程を一人のプランナーがどこまで持つか」という組織設計の話であり、新規接客から施行までを同じプランナーが担当するのが一貫担当制(または一顧客一担当制)、新規接客(営業)と打合せ・施行で担当者が分かれるのが分業制と呼ばれています。
なお、衣裳・美容・装花・音響などはもともと専門セクションやパートナー企業が担っているので、結婚式そのものは最初から多職種の分業で構成されています。この記事で扱う担当制度は、その中の「プランナー職の担当範囲」をどう設計するかの話としますね。業界にどんなプレイヤーがいて商流がどうなっているかはブライダル業界のビジネスモデルとお金の流れの全体地図の記事で書いていますので、前提から押さえたい方はこちらもご覧ください。

一貫担当制の仕組みと特徴
一貫担当制は、最初の見学対応をしたプランナーが、成約後の打合せもそのまま担当し、当日の施行までそのまま続くモデルです。
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顧客との関係が継続する:
引き継ぎが発生しないため、初回接客で聞いた要望や温度感がそのまま打合せ・当日まで引き継がれる -
プランナーのスキル範囲が広くなる:
営業・打合せ・施行のすべてを経験するため、一人で結婚式を作り切る力が身につく -
一人あたりの業務負荷が高い:
成約すればするほど打合せと施行の担当組数が積み上がり、新規接客に出られる枠が減る -
稼働の設計が難しい:
新規接客も打合せも施行も土日に集中するため、同じ人の土日の枠に複数の工程が重なり多忙になる
結婚式場の営業は土日祝に集中する構造で、実質的な営業日数は年間110日程度しかありません。この限られた土日の枠を、一人の中で接客と施行が重なるのが一貫担当制の特徴(難しい点でもある)です。プランナー一人が年間に担当できる組数には上限があり、施行数の多い会場になるほど、制度として回しにくくなっていきます。1バンケ会場の方が相対的にやりやすくなります。
分業制の仕組みと特徴
分業制は、新規接客を担当する営業(ウェディングアドバイザーなど別の職名がついていることもあります)と、成約後の打合せ・施行を担当するプランナーで分かれるモデルです。会社によってはさらに、打合せ担当と当日の施行責任者をキャプテンと分けているケースもあります。
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各工程に専念できる:
営業は接客と成約に、プランナーは打合せと施行に集中でき、それぞれの習熟が速い -
組織としての効率がよい:
土日の人員配置を工程ごとに最適化できるため、施行数が多くても回る -
採用・育成の設計がしやすい:
工程ごとに求めるスキルを絞れるため、未経験者の立ち上げや配置転換の選択肢が広い -
引き継ぎが品質の生命線:
新規接客から打合せ担当への引き継ぎがうまくいかないと、お客様は「聞いていた話と違う」と感じる
お客様側の視点では「担当が変わること」への不安がよく語られますし、「一貫担当制のほうが顧客満足度が高い」というイメージも一般には根強くあります。ただ、これは通説のほうが間違っていると思っていて、担当制度の違いと顧客満足度に相関はほとんどないというのが私の意見です。
一貫担当制を採用している会社がプロモーションとして顧客満足度について言及していることが多いですが、分業制でも引き継ぎと各工程の専門性がきちんと機能していれば顧客満足は十分に成立します。満足度を決めるのは制度ではなく運用の質だと言えるでしょう。
なぜ式場によって担当制度が違うのか
ではなぜ、式場によって採用する制度が違うのでしょうか。私は施行数の規模で決まる経済合理性が最大の要因だと考えています。
前提として、結婚式場の施設キャパシティには構造的な上限があります。1つの披露宴会場で1日にできる結婚式は最大2組、営業日は土日祝中心で年間110日程度。つまり披露宴会場1つあたり年間およそ200組が施行数の上限で、会場数を複数持つ施設ほど年間施行数は大きくなります。
施行数が少ない会場では、一人のプランナーが接客から施行まで持っても土日の枠が破綻しにくいため、一貫担当制が成立します。一方で施行数が多い会場では、同時進行する組数が多く、工程を分けて人員配置を最適化しないと物理的に回りません。規模が大きくなるほど、分業制に必然的に寄っていくわけです。
会場タイプ別の傾向としては、一貫担当制を採用しているのは業界全体の2〜3割程度で、残りは分業制、くらいのイメージ。ゲストハウスの一部が一貫担当制で、ホテル・専門式場を含むそれ以外の業態はほぼ分業制だと思います。ゲストハウスは1会場あたりの施行規模が比較的小さく、担当プランナーの存在を商品の一部として打ち出しやすい業態でもあるため、一貫担当制と相性がよいのが理由ですね。たぶんだけども。

担当制度の近年の変化
式場運営企業だけを見ると、分業制に少しずつ寄ってきている実感があります。ブライダル業界の人材状況の記事で書いた通り、人材の確保が年々難しくなっている業界なので、採用・育成を設計しやすく外部人材も組み込みやすい分業制のほうが、組織運営の柔軟性が高いからです。実際、正社員の採用と業務委託の活用を組み合わせるハイブリッド型の人材戦略は、今では業界の事実上の標準になりつつあります。
一方で、業界全体を俯瞰してみると、フリープランナーやプロデュース会社は増加の一途をたどり、この形態は一人または少人数のチームでお客様の結婚式を最初から最後まで作るモデルなので、必然的に一貫担当になります。つまりカテゴリとしての一貫担当制は微増、となっている。
まとめると、式場運営企業は分業へ、独立系は一貫へという二層の動きが同時に進んでいて、業界全体で見ると一貫担当と分業の比率は、実はそれほど変わっていないのかもしれません。「業界は分業化している」とも「一貫担当が増えている」とも、どちらか片方だけを切り取った見方をしてしまうと、実態とは異なった認識となってしまいそうです。

業務委託プランナーは組織モデルのどこに入るのか
式場が外部の業務委託プランナーを活用する場合、基本的に分業になります。
理由はシンプルで、一貫担当制の核である「担当の継続」を、外部人材では担保しきれないからです。業務委託は工程や日単位で稼働を組む契約なので、半年先の打合せから当日の施行まで同じ人が持ち続ける前提を外部人材で設計するのは、式場側にとってリスクが大きい。だから一貫担当制の会場であっても、業務委託を入れるときは工程を切り出して、新規接客か施行担当のどちらかだけを任せる形がほとんどです。長くブライダルのマッチングサービスを運営している立場ではありますが、「一貫担当制のままの業務委託」は聞いたことがありません。
実際、Wedding Me Worksで扱う案件も「新規接客」「施行担当」という担当範囲ごとに募集されていますし、その経済的な背景はブライダル人材の外注とアウトソーシングの記事でも書いています。
プランナーの経験タイプと任される仕事の範囲
プランナー側から見ると、どの制度で経験を積んできたかで、委託される仕事の範囲が変わります。
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未経験の工程を任されることはまずない:
業務委託は即戦力前提の契約です(研修も社員研修ではなく案件の仕様確認に近いもので、詳しくは業務委託の研修実態の記事をご覧ください)。分業制で打合せ・施行だけを経験してきた人が、業務委託でいきなり新規接客を振られることはありません -
一貫担当経験者は仕事の幅が広い:
両方の工程を経験しているため、新規接客案件も施行担当案件も委託される可能性があります -
ただし新規接客の「任されやすさ」は変わらない:
分業制で新規接客を経験してきた人と一貫担当経験者で、新規接客案件の任されやすさに差があるわけではありません -
むしろ一貫担当経験者が最初に苦戦することもある:
一貫担当の新規接客では「私が担当としてお二人の結婚式を作ります」と自分自身を売り込んで成約につなげる手法(いわゆる人売り)が使えますが、分業前提の新規接客ではこの手法が使えないため、最初は苦戦するケースがあります
担当制度を正しく理解しよう
最後に、この記事でいちばん伝えたいことを書きます。
片方の制度しか経験していない人は、もう片方の制度をよく知らないまま、ネガティブにとらえていることが多いように見えます。一貫担当出身の人は「分業は流れ作業で、お客様への想いが薄い」と言い、分業出身の人は「一貫担当は属人的で非効率」と言う。でも、ここまで書いてきた通り、どちらの制度にも合理性があり、これは優劣ではなく前提(施行数の規模・人員構成・事業モデル)の違いです。
転職や業務委託案件を検討する場面では、担当制度の違いは「仕事の範囲の違い」としてそのまま効いてきます。同じ「プランナー募集」でも、一貫担当制の求人と分業制の求人では日々の業務がまったく違いますし、業務委託であれば任される工程そのものが経験によって変わります。制度の背景まで理解していれば、求人票や案件情報を読み解く解像度が上がりますし、分業から一貫へ、一貫から分業へという移動も、違いを分かったうえでなら十分に対応できます。もう一方の制度を知らないままキャリアの選択肢から外してしまうのは、もったいないと思うのです。
まとめ
結婚式場の担当制度は、新規接客・打合せ・施行という工程を一人のプランナーがどこまで持つかという組織設計で、一貫担当制と分業制に大別されます。どちらを採用するかは思想の違いではなく、施設キャパ構造と施行数の規模で決まる経済合理性の問題であり、私の体感では一貫担当が2〜3割・分業が7〜8割。式場運営企業は分業へ寄りつつあり、一方で必然的に一貫担当となる独立系の層が増えているため、業界全体の比率は大きくは動いていません。そして業務委託を使う場合は基本的に分業となり、外部人材は工程単位で組織に入ります。
担当制度の違いと顧客満足度に相関はなく、優劣の話でもなく、前提の違いです。自分が経験していないほうの制度も正しく理解して、キャリアや働き方の選択肢を広く持ってもらえたらと思います。
今回の記事ではほとんどご紹介しませんでしたが、ウェディングプランナー経験者の業務委託案件での働き方に興味がある方、自分だったらどんな働き方ができるのかとお悩みの方は、ぜひお気軽にお問合せください。






























































































