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2026/08/14

結婚式の価格はなぜ上がり続けるのか

披露宴のテーブルコーディネートと電卓・資料。結婚式の価格構造を考えるイメージ写真

こんにちは、アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

「最近の結婚式は高くなった」という声は、業界の中でも外でもよく聞きます。一方で、統計の費用総額を見ると意外なほど動いていない。この矛盾して見える2つの事実は、データを分解するときれいにつながります。今回は、結婚式の価格がなぜ上がり続けるのかを、業界人向けに構造から整理してみます。

結婚式の価格はいま上がっているのか

「1組あたりの費用総額」はこの10年ほぼ横ばいですが「ゲスト1人当たりの単価」は大きく上がっています。

アイテムごとの単価が上がり、ゲスト人数が少し減り、特典や値引きが増えた、ミクロで見るとこのような変化が起こっているものの、公表統計の「結婚式の総額平均」だけを見ると変化していないように見えます。上がったものと下がったものが打ち消し合って、平均単価の合計が動いていないように見えるからです。

なお、費用まわりの統計は2025年度から調査体系が変わっており、最新の水準感や市場全体のデータはブライダル業界の市場規模と結婚式市場のデータ解説記事で整理しています。本記事が扱うのは、その水準ではなく「なぜ上がるのか」の構造のほうです。

ゲストの人数が減っているのに、総額は下がっていない

単価が上がっている証拠の1つ目は、人数と総額の推移のずれです。同一系列で長期比較ができる旧ゼクシィ結婚トレンド調査を見ると、披露宴・ウエディングパーティーの招待客人数の平均は、2014年調査の72.2人から2024年調査(最終版)の52.0人へと、10年で3割近く減りました。ところが挙式・披露宴の費用総額の平均は、同じ期間で333.7万円から343.9万円。この間ずっと330〜360万円のレンジに収まっていて、ほぼ横ばいです。

人数が3割減れば、料理や飲物、引出物など人数と比例・相関するアイテムのカテゴリ総額は3割減るはずです。それにもかかわらず総額が減っていないということは、それ以外のアイテムの単価が上がっているか、人数相関系アイテムの単価が上がっているか、いずれにしてもアイテム単価が上がっていることを意味します。

実際、同調査が公表している招待客1人当たりの費用は、2014年調査の5.5万円から、2018年調査で6.5万円、2024年調査では8.6万円まで上がっています。10年で1.5倍超。こちらは横ばいどころか、はっきりとしたインフレが起こっているのです。

ちなみにコロナ禍の2021〜2022年調査では、この1人当たり費用が9.8万円まで跳ね上がりました。人数を絞っても会場費や衣装などは減らないので、1人当たりで割ると急騰して見えるわけです。その後、人数の回復とともに8万円台へ落ち着きましたが、それでもコロナ前の6万円台には戻っていません。この動きは「1人当たり単価は人数に強く左右される」ことのわかりやすい実例でもあります。

※2025年度からは調査が「結婚マーケット調査」に統合され、母集団が変わったため過去との直接比較はできませんが、新調査でも1人当たり費用の平均は7.3万円と、2010年代の水準より明確に高い数字です。

招待客人数は10年で72.2人から52.0人に減少、費用総額は約340万円で横ばい、1人当たり費用は5.5万円から8.6万円に上昇した推移の図解

単価を押し下げるはずの少人数スタイルが増えても、平均は下がらない

2つ目の証拠は、実施スタイルの構成変化です。平均値は「どんな結婚式が増えたか」という構成の影響を受けます。そして増えてきたのは、明らかに平均を押し下げる方向のスタイルです。

旧トレンド調査の人数分布を見ると、招待客20人未満の割合は2018年調査の6.8%から2024年調査では13.9%へと倍増しました。逆に80人以上の割合は37.3%から17.1%へと半分以下になりました。大人数の披露宴が減って小さな式が増えれば、総額の平均は下がるのが自然です。市場全体に目を広げても、会食スタイルの結婚式やフォトのみといった、従来の披露宴より総額の小さいスタイルの存在感が増しています。

構成がこれだけ低単価側に寄ったのに、総額の平均は下がっていない。ということは、同じ人数帯どうしで比べれば、結婚式の価格は見かけの平均以上に上がっているはずなのです。統計の平均値だけを眺めていると、この構成効果に気づけません。「平均が横ばいだから価格は安定している」という読み方は、実態を捉え損ねていると思います。

アイテム単価を押し上げているのは社会環境の変化

なぜアイテムの単価は上がるのか。答えの大半は、ブライダル業界の内側ではなく外側にあります。

まず輸入コストと円安です。装花の花材、ドレス、引出物、料理・ドリンクの食材と、婚礼商材には輸入に依存するものが多くあります。この数年の円安と世界的な物価上昇は、これらの仕入れ値を直撃しました。消費者物価指数(生鮮食品を除く総合・2020年=100)は2025年平均で111.2。この5年で物価全体が1割強上がっており、食料に限ればそれを大きく上回る上昇率が続いてきました。結婚式の中身は「食」と「モノ」が中心なので、世の中の物価が上がれば婚礼原価にも影響してくるわけですね。

そして人件費も高くなってきています。地域別最低賃金の全国加重平均は、2014年度の780円から2025年度には1,121円まで上がりました。10年余りで4割超の上昇です。配膳やサービスなどパート・アルバイトへの依存度が高い披露宴の現場には、この影響もそのまま乗ってきます。正社員についても、業界の年収水準はこの数年で1割ほど上がってきた肌感があります。

そしてもう1つが、施行組数の減少と固定費の関係です。会場という大きな箱を維持する費用は、施行が減っても減りません。1組あたりに配賦される固定費が重くなるため、単価を上げないと採算が合わない構造になっています。この供給側の構造は結婚式場数の推移と業界の未来の解説記事で詳しく書いています。

輸入コストと円安、人件費、固定費の配賦。いずれも一過性ではなく、構造的に戻りにくい変化です。そしてどれも、業界の内側からはコントロールしにくい変数なんですよね。

婚礼アイテムの単価を押し上げる3つの構造要因。輸入コストと円安、最低賃金780円から1121円への人件費上昇、施行減による固定費配賦の増加

それでも総額が横ばいに見える理由

アイテム単価がこれだけ上がっているのに、なぜ総額の平均は動かないのか。打ち消している要素が2つあります。

1つはゲスト人数の減少です。結婚式の費目には、料理・飲物・引出物のように人数に連動するものと、会場費・挙式料・衣装・写真映像・演出のように人数が減ってもほとんど変わらないものがあります。人数連動の費目が小さくなるぶん、アイテム単価の上昇と相殺されて、総額は動いていないように見える。逆に言うと、人数非連動の費目が固定であるからこそ、1人当たりで割った数字は人数が減るほど機械的に上がっていきます。なので、「ゲスト1人当たりを厚くしようと思って上げている」というより「総額を人数で割って計算したら上がっていた」となるわけです。

もう1つは値引きと特典の拡大です。アイテムの定価が上がる一方で、成約時の特典や値引きの原資も増えており、実売ベースの総額は定価の上昇ほどには上がっていない印象があります。定価は上げつつ値引きで調整する、という価格運用が広がっているわけです。見積りの費目構造と値引きの仕組みは結婚式の見積りと原価の仕組みの解説記事にまとめています。

余談ですが、「以前と比べて単価が下がっているアイテム」は少なくとも私は聞いたことがありません。あるとすれば式場以外のところに発注して持ち込んだら節約できた、といったところでしょう。

値上げの時代に現場が問われるのは伝え方

単価が構造的に上がり続けるとなると、現場で問われるのは、値上げの是非よりもその伝え方です。

実際、値上げの前後で顧客への告知がうまくいかず、不満を書かれてしまった、という投稿をSNSでもよく見ます。契約後に価格改定が決まり、初期見積りから何の説明もなく金額が上がって「聞いていない」とトラブルになるケースなど。

値上げ自体はコスト構造上避けられなくても、いつの契約分から適用するのか、既に契約済みのお客様をどう扱うのか、どのタイミングで誰がどう説明するのか。この設計を誤ると、原価の問題ではなく信頼の問題に変わってしまうんですよね。

プランナー個人にできるのは、価格が上がっている構造を自分の言葉で説明できるようになっておくことだと思います。なぜこの金額なのかをロジックで語れる担当者と、「そういう決まりなので」としか言えない担当者では、同じ値上げでも顧客の納得感がまったく変わります。

まとめ

結婚式の価格が上がり続ける構造を整理しました。ゲスト人数が3割近く減ったのに総額は横ばい、つまり1人当たり単価は1.5倍超に上昇。少人数化という平均を押し下げるはずの構成変化があってもなお、平均は下がらない。その背景には、輸入コストと円安、人件費、固定費配賦という業界の外側からのコスト圧力があります。

この記事でいちばん伝えたかったのは、結婚式の単価は世の中の社会環境に大きく影響を受ける、ということです。為替が動けば花の仕入れ値が変わり、最低賃金が上がれば配膳スタッフの人件費が変わる。婚礼の値付けは業界の中だけで決まっているわけではありません。だからこそ、価格の話を「高い・安い」で終わらせず、どの変数がどう効いた結果なのかを構造で説明できることが、これからの業界人の強みになると思います。

今回の記事ではほとんどご紹介しませんでしたが、ウェディングプランナー経験者の業務委託案件での働き方に興味がある方、自分だったらどんな働き方ができるのかとお悩みの方は、ぜひお気軽にお問合せください。

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