Magazine

2026/08/14

フォトウェディング・少人数婚市場の動向

ロケーションでウェディングフォトを撮影するカメラマンと新郎新婦。フォトウェディング市場のイメージ写真

こんにちは、アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

フォトウェディングは今でも「伸びている」と言われる領域ですが、実際にどのくらいの規模で、なぜ伸びていて、式場ビジネスとどういう関係にあるのでしょうか。今回はフォトウェディングと少人数婚という、従来の挙式・披露宴の外側に広がってきた市場を、公表されている調査データと現場の感覚と合わせて整理します。調査の公表に合わせて年次で更新していく前提の記事です。

フォトウェディング市場はいまどのくらいの規模か

ウエディングパークが運営するフォトウエディング・前撮りのクチコミサイト「Photorait」の「フォトウエディング動向調査2025」によると、フォトウェディングの市場規模は推計1,025億円とのことです。この数字は、2024年の婚姻組数48万5,092組に実施率74.4%を掛けて実施組数約36万組を出し、そこに平均単価の28万4,156円を掛けて算出したもの。事業者の売上を積み上げた統計ではなく、消費者調査(2024年4月〜2025年3月に結婚した18〜49歳、3,207名へのインターネット調査)からの推計なので、厳密な市場統計というより規模感の目安として認識するのがよさそうです。

帝国データバンクの調査では結婚式場業の市場規模は4,800億円前後(2024年度)と推計されているので、フォトウェディングはすでにその2割ほどの規模まで来ている計算になり、挙式・披露宴の「おまけ」や「ニッチな代替品」と呼ぶには大きすぎる水準で、独立したカテゴリとして数字を追う価値のある市場になったと言えます。

なお、実施率について、この調査の74.4%は前撮り・後撮りを含む「フォトウエディング・前撮りの実施率」とされているので、リクルートブライダル総研の結婚マーケット調査2025が公表している「結婚を機とした写真撮影」の実施率61.5%とは、母集団も聞き方も異なります。写真を撮るだけのいわゆる「フォトウェディング」ではないですよ、ってことです。

婚姻数が減るなかで市場が伸びている理由

同じ調査の2024年版では、市場規模は推計869億円、実施率は70.6%、平均金額は約25.9万円でした。婚姻数はほぼ横ばいなので、実施率(70.6%→74.4%)と平均金額(25.9万円→28.4万円)の両方が上がった結果、1年で市場規模は約18%伸びた計算になります。組数が減っていく業界で、実施率と単価が同時に上がってカテゴリ規模が拡大しているのは、ブライダル業界の中でも珍しい領域だと言えます。

また、金額の分布を見ると、30万円以上をかけた人が前年から4.7ポイント増え、10万円未満が4.6ポイント減っています。「安いから選ばれている」市場なら分布は下に寄っていくはずで、実際に起きているのはその逆だと考えられます。こだわる人が増えているのではないか、と。

フォトウェディングはもともと「式は挙げないが写真だけは残したい」という、挙式・披露宴の安価な代替として広がってきました。それがコロナ期に、式を挙げたくても挙げられない層の受け皿として需要が大きく増え、その過程で「フォトだからこそのこだわり」を持つ層が少しずつ増えている。

さらに近年は韓国風フォトの流行や、実際に渡韓して前撮りをするカップルも増えており、衣装も2着以上着る人が66%、「洋装+和装」の組み合わせが38.7%で最多となっています。

現在のフォトウェディング市場は、ロケーションや衣装や世界観にお金をかけるこだわり層と、費用を抑えて手軽に残したいコスパ層の二層に分かれてきていると考えられ、平均金額を押し上げているのは前者で、「フォト=安い」という一括りの見方はすでに実態と合わなくなっている、というのが個人的な所感です。

フォトウェディング市場規模の推移。869億円から1,025億円への拡大を実施率と平均金額の上昇に分解した図解

誰がフォトウェディングを実施しているのか

フォトウェディングの実施者を挙式・披露宴との関係で分けると、挙式・披露宴を実施した層のフォト実施率は86.0%、実施していない層でも63.7%。両方とも前年から3〜4ポイント伸びています。

まず注目したいのは、挙式・披露宴をやる人ほどフォトもやっている、という点です。実施理由の上位は「結婚式とは異なる衣装を着たかった」(41.9%)、「結婚式とは異なる場所で撮影したかった」(35.0%・過去最高)で、式の代わりではなく、式では実現しきれなかったことを叶える追加消費として使われています。前撮り・後撮りの文化が定着した現代では、「挙式・披露宴もして前撮りもする」が多数派の行動となりつつあります。

一方、挙式・披露宴をしない層の63.7%は、式はしないがセレモニーを何もしないわけではない、という層です。結婚マーケット調査2025でも、結婚したカップル全体のうち「フォトのみ実施」が16.3%を占めており、フォトウェディングはナシ婚の代替品ではなく独立したセレモニーのカテゴリとして定着しています。結婚式市場全体の実施スタイルのデータはデータで見るブライダル業界の市場規模と結婚式市場の解説記事で整理しているので、全体像はそちらを見てください。

このデータを踏まえると、「結婚式場の顧客がフォトウェディングに流れている」と読むのは実態とずれていると言えます。実施層のデータが示しているのはむしろ併用の広がりで、フォトのみ層はそもそも挙式・披露宴を選ばない層です。フォトウェディングは式場ビジネスの隣にある関連市場ですが、相互にカニバっているわけではないのです。

フォトウェディングの二層需要。挙式披露宴実施層の実施率86.0%と未実施層の63.7%を対比した図解

少人数婚市場の動向

フォトと並行して、挙式・披露宴の内側でも小型化が進んでいます。旧ゼクシィ結婚トレンド調査では、招待客20人未満の結婚式は2018年の6.8%から2024年には13.9%へ倍増し、80人以上は37.3%から17.1%へ半減しました。結婚マーケット調査2025では、結婚を機とした食事会の実施率は33.8%。挙式や披露宴という形式を取らず、家族中心の会食で結婚を祝う層が明確なボリュームゾーンになっています。人数構成の変化が結婚式の単価に与えている影響は結婚式の価格が上がり続ける構造の解説記事で書いています。

さらに、フォトとの境界も曖昧になってきています。フォトウエディング動向調査2025では「家族と一緒に撮影」が29.7%と前年から6.1ポイント増え、会食付きのフォトプランを選ぶ人も増加傾向です。フォト撮影と家族での会食を組み合わせれば、実質的には小さな結婚式として機能します。挙式・披露宴/会食婚/フォトという商品カテゴリの区分は事業者側の都合であって、ユーザー側は「家族との時間」と「写真」という要素を予算に合わせて組み合わせているだけ、と見たほうが実態に近いと思います。

ちなみに、事業として見るときは、少人数・会食婚とフォトを一括りにせず別々のスタイルとして管理運用することが重要です。ユーザーのインサイトは近いのですが、利益構造に飲食が含まれるかどうかによって原価も利益率も変わってくるので、同カテゴリとしてカウントすると業績予測でミスります。

フォト市場の集客構造は式場集客と全く違う

このようなフォト市場の伸びを背景に、式場運営事業者のフォト事業進出も近年増えてきています。遊休資産の活用、コンテンツや人材関連の既存リソースの活用、新たな収益源の確保、このあたりが目的ですね。

この流れ自体は自然かなと思うのですが、集客モデルが式場集客とは大きく違う、という点については注意が必要です。

式場集客にはゼクシィをはじめとする媒体・メディアが複数あり、とりあえず媒体経由の来館予約を起点にファネルを設計しておけば最低限は何とかなります。しかしフォトウェディング市場には、このゼクシィ的なポジションの媒体が存在しません。Photoraitのような専門クチコミサイトはありますが、市場の入口を握っているとまでは言えず、集客の主戦場はSNSと運用型広告なのです。

実際、フォトウエディング動向調査2025でも情報収集源はInstagramが33.5%で最上位、クチコミを参考にした人は61.7%と過去最高を更新しています。ユーザーは媒体のランキングではなく、SNS上の作例と口コミでスタジオやプランを選んでいるわけです。

そのため式場運営の感覚のままフォト事業に参入すると、まず集客でつまずきます。媒体運用を軸にした式場集客のノウハウはフォト市場ではほぼ流用できないため、運用型広告やSNS運用の知見を持っていないと、せっかく意気揚々と参入しても事業計画がただの机上の空論になってしまいます。

式場事業者にとってフォト・少人数婚は機会になるか

ここまでの構造を踏まえると、式場運営の事業者にとってフォト・少人数婚は、正しく設計すれば十分に機会になると考えています。実際、フォトを式の下位商品としてではなく、独立した事業として本格的に取り組む式場運営事業者は増えてきていますし、単価は挙式・披露宴に及ばなくても、一定の規模感を取れればそれなりの業績規模にもなります。

式場がフォト事業をやるのであれば、フォトスタジオやフリーランスフォトグラファー等と比較して、以下の点が強みになりそうです。

  1. ロケーション:
    チャペルや披露宴会場そのもので撮影する「チャペルフォト」は、スタジオ事業者やフリーランスのカメラマンには物理的に提供できない商品で、式場だけが持てる差別化要素になる
  2. 稼働率:
    式場のアセットは土日に稼働が偏り、平日は空いていることが多い。フォト撮影は平日に入れられるので、遊休時間の稼働率を上げる打ち手としてそのまま機能する
  3. 原価:
    チャペルも衣裳も美容も、挙式・披露宴事業のためにすでに保有している資産なので、フォト事業の追加投資が小さくて済む

収益性自体は高くなくても、余剰資産を有効活用してマネタイズする発想で見れば、限界利益はしっかり出る事業になり得ます。

ただし、たとえチャペルが使えるといっても、それが集客で必ず活きるというわけではありません。SNSと広告で選ばれる状態を作れなければ予約は埋まらないので、式場のフォト参入は、商品力よりもまず集客できそうかどうかから企画検討を始めていくといいと思います。

式場がフォト事業に参入する際の3つの構造的な強み。チャペルフォト・平日稼働率・余剰資産の活用を整理した図解

まとめ

現代のフォトウェディングと挙式披露宴は二者択一の選択肢ではありません。データ上も、フォト市場の拡大は挙式・披露宴の併用層と、そもそも式を選ばない層の両方から来ており、式場の客を直接奪ってはいません。市場としては約1,025億円まで育ち、こだわり層とコスパ層に分化しながら、実施率と単価の両方で伸びています。

だからこそ、式場側の人は「フォトニーズにどう対抗するか」ではなく、「なぜこのユーザーはフォトを希望するのか、そのユーザーは式場に何を求めているのか」というインサイトを考えるとヒントが見つかると思いますし、逆にフォト側の人は「式場と競争せずにどうやってユーザーのニーズに応えていくか」を考えるとよいと思います。

本記事はフォトウエディング動向調査などの公表に合わせて年次で更新していく予定です。カテゴリの境界が溶けていく市場だからこそ、年に一度、数字で現在地を確認する定点観測にお使いください。

今回の記事ではほとんどご紹介しませんでしたが、ウェディングプランナー経験者の業務委託案件での働き方に興味がある方、自分だったらどんな働き方ができるのかとお悩みの方は、ぜひお気軽にお問合せください。

フリーランス・副業プランナーの働き方や案件情報について話を聞いてみる

この記事を書いたライター

新着記事