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2026/08/12

結婚式場の情報流通&集客・マーケティング施策はゼクシィ一強からSNS・AI検索へどう変わったか

結婚情報誌とスマホで式場写真を見比べる手元、奥に披露宴会場が見える情報収集のイメージ写真

こんにちは、アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

「ゼクシィに載せておけば集客できた時代は終わった」。業界にいれば誰もが聞いたことのある言葉ですが、では実際に何がいつどう変わったのかを時系列で説明するのは意外と難しいかもしれません。

結婚式場の集客やマーケティングに関する話は、単なる販促ノウハウではなく「新郎新婦と式場の間の情報流通の構造」の話です。今回は、この約30年の変遷を4つの時代に区切って整理します。

結婚式場の情報流通はなぜ媒体が強くなりやすいのか

変遷に入る前に、そもそもなぜブライダル業界では特定の媒体に力が集まりやすいのかを押さえておきます。

結婚式は、ほとんどの人にとって一生に一度の買い物です。数百万円の高額商品なのに購買経験がなく、周囲の経験者の知識も数年で古くなる。つまり買い手側に知識の蓄積が効かない、情報の非対称性が極端に大きい商材です。こういう市場では、物件情報の不動産や車両情報の中古車と同じように、「情報をまとめて比較できる場」に買い手が集まり、買い手が集まる場に売り手の広告費が集まります。

式場側の事情も同じ方向を向いています。1つの式場が施行できるのは年間数百組までですし、商圏が狭いのでテレビCMのような全国認知型の広告との相性も悪く費用対効果が合わない、さらに「結婚が決まった人だけに見てもらえればOK」なので、そうした買い手が見に来る媒体に出稿を集中させるのが合理的なのです。

このような業界構造である結果として、これまでのブライダル業界の広告費はゼクシィを中心とした媒体投資へ集中していたわけです。

さて、この前提を踏まえ、情報の入口がどう移り変わってきたかを考えてみましょう。私は大きく4つの時代に区切って捉えています。

  • 紙媒体一強期(1993年〜2000年代): ゼクシィ誌面が情報の入口をほぼ独占
  • ウェブ媒体への移行期(2000年代〜2010年代前半):
    ゼクシィネットと口コミサイトの台頭
  • SNS・分散期(2010年代後半〜現在):
    Instagramと運用型広告でチャネルが並列化
  • AI検索期(2020年代半ば〜): 進行中の転換点

結婚式場の情報流通の変遷を4つの時代に区分した年表図

紙媒体一強期のゼクシィのビジネスモデル

ゼクシィの首都圏版が創刊されたのは1993年5月。以降、地域版を全国に広げ、結婚が決まったらまずゼクシィを買う、という行動が定着していきました。「プロポーズされたらゼクシィ」は有名ですね、今は変わりましたが。

ビジネスモデルはシンプルな掲載課金型です。式場が掲載枠を買い、どのくらいのページ数・どの位置に載るかに応じて掲載料を払う。読者である新郎新婦は無料どころか、お金を払って広告枠を買う。あの電話帳のような分厚さは、そのまま「結婚が決まった人にリーチしたい」業界の広告需要の総量でした。

新郎新婦の行動もほぼ一本道でした。ゼクシィを買い、気になる会場に付箋を貼り、資料請求をして、ブライダルフェアを予約する。情報の入口がほぼ1つしかないので、式場側の集客戦略は「ゼクシィにいくら払って、どれだけの露出を取るか」に集約されていました。

ゼクシィがリクルートの中でも最高傑作と言われ、ブライダル業界内で一強であり続けたのは理由があります。読者が最も集まる媒体には式場の掲載が集まり、掲載が厚い媒体は情報量で他を圧倒し、さらに読者を集める、という自己強化ループが回り切った市場で、2番手の媒体が逆転する余地はほとんどありません。プラットフォームビジネスの教科書のような構造が、この業界では紙の雑誌で実現していたわけです。

ウェブ媒体への移行期に起きた変化

雑誌ゼクシィの創刊の5年後、1998年にはゼクシィのウェブ版の前身となるサービスが始まっています。2000年代に入ると口コミサイトや後発のウェブ媒体が次々に生まれ、式場探しの主戦場は誌面からブラウザへ徐々に移っていきました。

ここで大事なのは、何が変わって、何が変わらなかったかの理解です。

まず、変わらなかったのは式場から媒体社に流れるお金の構造。ウェブ媒体の多くも基本は月額の掲載課金だったので、式場から見たコスト感は紙とそれほど変わりませんでした。「紙からウェブへの革命」と言われがちですが、課金モデルだけ見れば連続的な変化です。

一方で大きく変わったのが、式場側の仕事の質です。紙は一度入稿したら次の号まで差し替えられませんが、ウェブはブライダルフェアやプランをいつでも更新できます。施策の更新頻度を上げ、細やかな情報発信が媒体経由でもできるようになりました。ただしそれは同時に、更新し続けなければいけない運用負荷が式場側にのしかかることも意味し、「出稿する」仕事から「運用する」仕事へ変わったとも言えます。

もう1つの新要素が口コミでした。実際に式を挙げた人の評価という「式場がコントロールできない情報」が検討材料に加わったのはこの時期です。ただ、この時点では力関係はまだ媒体優位のまま。情報の入口が紙からウェブ媒体に移っただけで、「媒体に載っていなければ見つけてもらえない」という構造自体は崩れていませんでした。

SNSと運用型広告で分散した現在の情報流通

構造自体が崩れ始めたのは2010年代後半、スマホとInstagramの普及からです。

ハッシュタグを軸に、先輩花嫁の実例写真・動画が大量に流通するようになり、情報の発信者が媒体と式場だけでなく「一般の個人」にまで広がりました。媒体を開く前に、SNSで好きな会場がすでに決まっている。そんな新郎新婦が現れ始めたのがこの時期です。

式場側のお金の動きもはっきり変わりました。広告費の出稿先として、MetaやGoogleといったプラットフォームへの投資比率が明確に増え、従来のブライダル媒体への投資を減らしてでもそちらに配分するケースが増えています。さらに、広告出稿だけでなくアカウント運用の概念も浸透してきており、投稿運用の代行や、専門性が必要なショート動画などのコンテンツ制作への外注費も増えてきました。移行期に生まれた「運用する」仕事が、媒体ページの更新からSNS・広告・コンテンツ全体の運用に拡張した、と言い換えられます。

リクルートブライダル総研の結婚マーケット調査2025では、会場検討時に利用した情報源(複数回答)は、親の紹介・口コミが27.1%、友人・知人の紹介・口コミが21.1%、結婚情報誌が17.4%、結婚情報サイトが16.4%、有名人・インフルエンサーの紹介・口コミが14.9%、SNS・動画共有サイトが8.2%。そして「特に利用していない」も15.5%います。かつての「ほぼ全員がゼクシィ」からすると、どのチャネルも決定打にならないほど並列化したのが今の姿です。

一点補足しておくと、現代の式場集客は媒体経由が5割、それ以外が5割という程度の比率だと感じていますが、そもそも「何で集客できたか」を1つのチャネルに帰属させること自体が難しくなっていると感じています。

というのも、実際の新郎新婦の動きを観察すると、媒体で会場を知り、SNSを見て好きになり、口コミで評判を確かめ、公式HPにベストレート保証と書いてたから公式HPから予約した、というように複数のチャネルに触れてから予約に至るのが普通だからです。

従来の計測は「どのサイトから予約が来たか」というラストアクションで判断してきましたが、この動き方が標準になると、最後の接点だけを見て媒体やSNSへの投資を判断するのは、むしろ実態を見誤る原因になるので注意が必要です。

新郎新婦が媒体・SNS・口コミ・公式HPに複合接触してから予約に至る流れと、ラストアクション計測では途中の接点が見えないことを示す図解

余談ですが、雑誌のゼクシィの実売部数は2022年12月に過去最高を記録したそうです。すごいですよね。編集部自身が誌面を「プロポーズされたら買う婚約記念品」と位置づけ、約半数がパートナーと一緒に店頭で買っていく。情報インフラとしての役割をSNSや公式HPに譲る一方で、「結婚が決まった」という体験を象徴する商品としての価値を確立したわけです。

このような事例からもわかるように、紙媒体そのものが不要になったわけではなく、紙媒体だけで完結することがほぼなくなったという認識を持つことが重要になります。大量のページを買って露出を最大化する必要はなくなりましたが、載せておいたほうがいい。紙で知ってもらい、SNSや公式HPを見たくなるフックを提供する場、と位置づけを捉え直して、出稿内容と出稿量をコントロールするのが今の付き合い方だと思います。

AI検索は情報流通をどう変えつつあるか

そして4つ目の転換点が、いままさに進行しているAI検索です。

マクロの数字から見ると、変化のスピードはかなり速い。AI検索白書2026によれば、情報収集にAI検索を使う人の割合は2025年3月時点の1割弱から同年11月には約3割へ、8ヶ月で3.5倍に増えています。また、検索行動のうち23.9%は、検索結果やAIの回答画面だけで完結してWebサイトを訪問しない「ゼロクリック」だったと報告されています。

これを式場探しに置き換えると、「東京 30人 少人数 結婚式場」と媒体で検索して一覧を眺める代わりに、AIに条件を伝えて要約された数件の候補から検討を始める、という行動が増えていくことになります。これまでの3つの時代は「情報の入口がどの場所に移るか」の変化でしたが、AI検索は比較・絞り込みという行為そのものが人からAIに移るかもしれないという点で、質の違う変化になる可能性があります。

ただし、式場集客担当者の興味関心は高まっているものの、私の見る限り具体的な対策を実行できている式場・媒体はまだ見当たらず、明確な成果が出たという話も聞いたことがありません。AI検索への最適化(AIOやLLMOと呼ばれる領域)は、SEOほど体系化されていないのが実情であり、今すぐ慌てて何かに飛びつく段階ではないと思います。

それでも、ここまでの3つの時代で「入口の変化に気づくのが遅れた会場ほど、あとから高い集客コストを払ってきた」ことは共通の経験値と言えるので、定石が固まってから動くのか、固まる過程を観察しておくのか。この差は数年後に出てくるはずです。

情報流通の構造を知ることは現場の武器になる

新郎新婦がどのチャネルを通って来館したかによって、来館時の心理状態がまったく違います。SNSで何ヶ月もフォローして「ここで挙げたい」と思って来る指名型の来館と、媒体で条件検索した4件のうちの1件としての来館では、顧客の温度感も求められる接客の内容も大きく異なります。前者に一から会場説明を始めれば冷めますし、後者に説明を省けば不安が残る。来館前にどんな情報に触れてきたかを想像できることは、接客スキルと同じくらい成約率に効く要素だと思っています。

なので、ここまでの話は、一見すると集客担当やマーケターだけのテーマに見えますが、私は現場のプランナーにこそ知っておいてほしいと思っています。

それに、情報流通の構造を体系的に理解して集客施策を組み立てる仕事は、純粋に面白いものです。接客のプロフェッショナルを目指す人も、時間があるときにマーケティングや集客の領域を勉強しておくと、キャリアの幅は確実に広がりますし。プランナー経験者が学んでおくと強い領域はウェディングプランナーのスキルアップの解説記事でまとめていますので、興味があればご覧ください。

まとめ

結婚式場の情報流通は、紙媒体一強期、ウェブ媒体への移行期、SNS・分散期、そして進行中のAI検索期という4つの時代を経てきました。変わったことの本質は、チャネルの数が増えたことではなく、次の3点だと考えています。1つの場所で情報収集が完結しなくなったこと。式場の販促が「出稿する」仕事から「運用する」仕事に変わったこと。そして、複合接触が当たり前になり、ラストアクションだけの計測では実態を読めなくなったこと。

ゼクシィ一強の時代を知る世代にも、最初からSNSネイティブの世代にも、この30年の流れを一枚の地図として持っておいてもらえたら、日々の集客や接客の議論が理屈で読めるようになるはずです。

今回の記事ではほとんどご紹介しませんでしたが、ウェディングプランナー経験者の業務委託案件での働き方に興味がある方、自分だったらどんな働き方ができるのかとお悩みの方は、ぜひお気軽にお問合せください。

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