ブライダル業界の利益率と式場決算の読み方【2026年版】

こんにちは、アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
結婚式は1組数百万円の高額商品なので、結婚式場やブライダル業界は儲かっていると思われがちですが、実際はそんなことはありません。業界の中で働いている人でも、自分の会社や会場の利益率がどれくらいで、PLがどんな構成になっているのかを説明できる人は多くないと思います。
今回は、結婚式場の利益率の実態とPLの読み方を整理したうえで、上場しているブライダル企業の最新決算を比較し、日々の現場からは見えにくい「式場経営の数字」を解説します。
結婚式場の利益率の実態
最初に結論を書くと、結婚式場の営業利益率は1割に届かないことが多いです。売上のうち約5割が原価に消え、人件費・広告宣伝費・会場維持費といった販管費を引いていくと、手元に残る営業利益は10%弱。これが業界の傾向値です。
ただしどの会社も等しくこの程度の利益率というわけではありません。後半で詳しく見ますが、上場しているブライダル企業の直近本決算を並べると、営業利益率は約3%から約13%まで大きくばらついています。感覚的には、営業利益率が二桁を超えていれば「儲かっている会社」と判断していいかなと思います。
営業利益率10%を高いとみるかは人それぞれですが、少なくとも「結婚式場は儲けすぎ」という世間の印象は実態とずれていると言えます。しかし「結婚式場はどこも儲からない」と一括りにするのも正確ではなく、うまく利益を残せている会社とそうでない厳しい会社が二極化しつつある、というのが現時点の私の捉え方です。
式場PLの読み方
まず式場の売上は「施行組数 × 組単価」で決まります。施行組数は来館数 × 成約率、組単価はアイテムごとの単価 × 発注数量(ゲスト人数と相関)から値引き・特典を引いたものです。結婚式の稼働は土日祝に集中するため実質的な営業日は年間110日前後、1つの披露宴会場で1日に施行できるのは2〜3組が上限なので、年間の施行キャパは会場数次第でおおよそ200〜400組。組単価も300〜400万円台が中心です。
次に原価。料理・飲料の食材原価は売価の2〜3割程度、衣裳・写真・映像などパートナー企業から仕入れるアイテムは売価の5〜8割程度で、かけ率はアイテムや提携企業によって大きく異なります。これらを全体で合算すると、売上全体に対する原価はおおよそ5割程度、つまり粗利率5割前後の会社が多いと思います。
そして、ここから販管費を引いていきます。大きい費目は以下の3つ。
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人件費:
プランナー・サービス・調理など現場スタッフと本社部門の人件費。数ヶ月にわたる打合せを担当制で行う労働集約型の商売なので、販管費の中で最も重い費目 -
広告宣伝費:
情報媒体への掲載料、相談カウンターへの送客手数料、SNS・検索の運用型広告など。1組の成約を獲得するための広告コストが高い業界で、これも売上の1割前後を占める -
会場維持費:
地代家賃と減価償却が中心。多くの式場は借入をして会場を建て、建築費を減価償却として毎年費用化しながら、数年から十数年かけて回収するモデル
これらを引いた残りが営業利益で、傾向値としては10%弱。冒頭に書いた「1割に届かないことが多い」の内訳がこれです。
1点補足しておくと、減価償却は会計上の費用でありお金の支出とはタイミングがずれます。PLでは利益が出ていても、借入の元本返済はPLに載らずキャッシュを削っていくので、式場経営には常にキャッシュフローのプレッシャーがかかっています。
また、どこまでを原価に含めるか、償却をどんな方法で行うかは会社によって異なるため、同じ商売でも会計方法次第でPLの見え方が変わります。後半の上場企業比較で各社の原価率や利益率を単純に横並び比較しにくいのは、この会計方法の差があるためです。

なぜブライダルビジネスの利益率は低くなりやすいのか
ポイントは「売上に天井があるのに、費用は固定費が重い」という組み合わせです。
売上側は前セクションの通り、結婚式場の営業日数・会場数・回転数・組単価のすべてに上限があり、どれだけ営業を頑張っても青天井には伸びません。一方で費用側は、会場の地代家賃・減価償却・正社員の人件費といった、施行が入っても入らなくても毎月出ていく固定費が中心です。
固定費型のビジネスは稼働が高いうちはよいのですが、施行組数が減り始めると利益が急速に薄くなり、赤字に転落しやすい。装置産業に近いコスト構造なのに、需要は土日祝・春秋のシーズンに偏っていて設備を平日にフル活用しにくいという、設備効率の悪さも抱えています。
さらに近年のマーケットの縮小に起因する集客コストの高騰が追い打ちをかけてきています。結婚式はリピートのない一発勝負の商材なので、1組の成約を獲得するたびに広告費を払い直す必要があります。特に、ブランド化がされておらず立地やコンセプトで指名される会場になれていない、いわゆる「比較検討される側」の会場は、価格訴求型の広告と値引きに依存しやすく、利益率が下がる → 商品やサービスに再投資できない → さらに選ばれにくくなる、という悪循環に入りがちです。
そして人件費。売上の天井と重い固定費のもとでは、人件費に回せる原資にも上限が生まれます。ブライダル業界の給与がなかなか上がらないのはこの構造が原因で、詳しくはブライダル業界の年収と給与構造の解説記事で書いていますが、働く側から見た給与の問題と、経営側から見た利益率の問題は、実は同じPL構造の裏表なのです。
結婚式場運営における損益分岐点の考え方
固定費型のビジネスでは、損益分岐点(固定費を回収して利益がプラスに転じるライン)がどこになるかの見極めが経営の生命線になります。
考え方はシンプルで、損益分岐点となる施行組数 = 固定費 ÷ 1組あたりの限界利益(組単価 − 1組あたり変動費)です。実務の現場では、これを「年間施行が何組できれば回るか」という形で判断していることが多いです。
なお、損益分岐点となる組数は、その会場の家賃水準や償却残、広告宣伝費の効率(1成約あたりの獲得コスト)、来館からの成約率などによって大きく変わります。同じ会社が運営する会場同士でも、都心の高家賃な会場と地方の自社保有会場では必要な組数がまったく変わってきます。
そのため運営会社の企画担当者は個別会場ごとにPLを作成し、会場単位で損益を見て事業運営をすることが重要になります。会社全体のPLだけを見ていると、好調な会場が不調な会場の赤字を埋めている状態に気づけないですからね。
自分の働いている会場は年間何組の施行で、損益分岐点はどのあたりにありそうか。正確な数字は経営層しか知らなくても、この目線を持って現場に立つだけで、繁忙期の1組・閑散期の1組の重みの違いが見えてくるはずです。
利益率が高い式場は何が違うのか
では、営業利益率が二桁を超えてくる会社・会場は何が違うのか。私は大きな要素は3つだと考えています。
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① 会場維持にかかるコストが低い:
ロケーションや物件オーナーとの交渉によってかなり格安で施設使用権を得られているケースや、創業からかなりの年数が経過しており定率法で減価償却していて既にかなり償却が済んでいるケース、などは、同じ売上でも固定費が軽い分だけ利益が残ります -
② 広告宣伝費率が低い:
その会場で挙げること自体がブランドになっているケース。SNSで「#◯◯花嫁」のようなハッシュタグがつくほど人気のある会場は、媒体や運用型広告に大きく出稿しなくてもオーガニックで集客できるため、広告宣伝費率が2〜3%程度に収まっている会場もあります。 -
③ 業務効率化が進んでいる:
販管費の中で最も重いのは売上高人件費率です。業務効率化が進んでいる会社は1人あたりの担当組数や接客可能数が多いので、相対的に人件費率が下がります。1人で4組を担当する会社よりも、同じクオリティで6組を担当できる方が利益は出る、という単純ですが強力な話です
特に利益率の高い会社や会場では、この3つのうち最低でも1つ、もしくは複数の条件が当てはまっていることが多いです。逆に言えば、立地も償却も広告効率も人員効率も平凡なままでは、どれだけ現場が頑張っても利益率の傾向値(10%弱)を超えていくのは難しいと言えます。
それぞれの具体的な施策についてはこの記事のテーマからは外しますが、人件費については、効率化に加えて繁閑差に合わせて人件費を変動費化する方法もあり、繁忙期だけ外部のプランナー経験者に業務委託で入ってもらう活用が広がっています。この使い分けはブライダル人材の外注と雇用・派遣・業務委託の使い分けの解説記事で詳しく書いていますので、興味があればご覧ください。

業態によるPLの違い
結婚式を行える施設には、ホテル・専門式場・ゲストハウス・レストランと業態はいろいろありますが、実は「ウェディング事業単体のPL」に限って見れば、会場タイプによる構造の大差はありません。売上は施行組数×組単価、原価はかけ率の合成、販管費は人件費・広告費・会場維持費。ここまで書いてきた読み方がそのまま通用します。
ただし、事業ポートフォリオの観点では会場タイプごとに違いがあります。ホテルには宿泊・宴会・料飲(館内レストランなど)の売上があり、レストランにはレストラン営業の売上があります。ウェディングは複数ある事業の1つなので、「ウェディング事業単体でいくら稼がなければいけないか」が専門式場やゲストハウスとは違いますし、建物全体にかかる固定費を事業ごとに案分できるため、会計方法次第でウェディング事業に載る固定費を軽く見せることもできます。同じ「ウェディングの利益率」でも、単業の専門式場と多業のホテルでは数字の意味が違うのです。
また、近年増加しているプロデュース型のサービスも大きくPL構造が異なります。彼らは自前の会場を持たないため、地代家賃や減価償却といった会場固定費がない代わりに、施行のたびに会場を借りるので会場費が原価に入ります。固定費が軽くリスクの小さいモデルですが、会場アイテムの粗利を取り込めないため売上も小さく、規模感としては式場運営企業よりも小さいことがほとんどですね。
このように「固定費型の式場運営」と「変動費型のプロデュース」は、同じウェディングでも別のビジネスモデルと考えたほうがよいと言えます。
上場企業の決算比較【2026年版】
ここからは実際の決算数値を見ていきます。対象は2026年8月時点でブライダルを主業として上場している6社、数値は各社の直近の通期決算短信からです。各社で決算期が異なるため、「それぞれの最新本決算」を並べている点はご了承ください。
まず前提として、ここ数年で上場ブライダル企業の顔ぶれは大きく変わりました。ワタベウェディングはコロナ禍の業績悪化を経て2021年に上場廃止となり、現在は興和の完全子会社です。ノバレーゼは2016年にMBOで一度非上場化した後、2023年に東証スタンダードへ再上場。そしてそのノバレーゼを存続会社としてエスクリとの経営統合が行われ、エスクリ株は2026年3月に上場廃止、2026年4月から新社名「オンザページ」として上場を継続しています(統合後の連結売上は470億円規模になる見込みと公表されています)。テイクアンドギヴ・ニーズは決算期を3月から12月に変更したため、直近の2025年12月期は9ヶ月の変則決算です。
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ツカダ・グローバルホールディング(2418): 2025年12月期
売上約731億円・営業利益約95億円・営業利益率13.1%。増収増益。ホテル事業や海外ウェディングも展開しており、6社の中で最大かつ最も利益率が高い -
テイクアンドギヴ・ニーズ(4331): 2025年12月期(9ヶ月変則)
売上約357億円・営業利益約16億円・営業利益率4.5%。参考として、直前の12ヶ月決算である2025年3月期は売上約477億円・営業利益約41億円で営業利益率8.6%。ハウスウェディング最大手 -
アイ・ケイ・ケイホールディングス(2198): 2025年10月期
売上約225億円・営業利益約18億円・営業利益率8.1%。減収・営業減益。地方都市中心にゲストハウスを展開 -
オンザページ(9160・旧ノバレーゼ): 2025年12月期(ノバレーゼ名義・IFRS)
売上約220億円・営業利益約22億円・営業利益率10.2%。5期連続増収かつ大幅増益。エスクリ統合前の数字であり、統合後の初回通期決算(2026年12月期)が今後の注目点 -
クラウディアホールディングス(3607): 2025年8月期
売上約136億円・営業利益約4億円・営業利益率3.0%。増収増益。婚礼衣裳の製造・レンタルが主業で式場運営も行う -
ブラス(2424): 2025年7月期
売上約136億円・営業利益約8億円・営業利益率5.5%。増収増益で施行組数・受注組数とも過去最高。東海圏中心にゲストハウスを展開
このように、ブライダル上場企業の営業利益率のレンジは3.0%〜13.1%。この記事で書いてきた「傾向値10%弱・二桁なら優良」という物差しを当てると、二桁に乗せているのはツカダ・グローバルホールディングとオンザページの2社で、他の4社は数%台です。ホテル・海外という事業ポートフォリオを持つツカダと、好条件物件への出店に成功しているノバレーゼという構図で、事業ポートフォリオや原価構造の違いが利益率の差になって決算に表れていることがわかります。

ブライダル企業の決算の読み方
ブライダルの決算を読むときに私が大事だと考えているポイントは2つあります。
1つ目は、複数事業を行っている会社はまずブライダル事業のセグメント情報を見ることです。前セクションで書いた通り、連結PLには宿泊・料飲・衣裳・海外などが混ざるので、全社の利益率だけを見ても式場運営の実力はわかりません。
2つ目は、当期の売上や利益と同時に期末の「受注残」を見ることです。受注残とは、期末時点で成約済みだがまだ施行していない翌期以降の案件数のこと。結婚式は成約から施行まで数ヶ月から1年程度あり、何月に挙式してもらうかは営業がどの月で提案するかによってある程度コントロールできます。そのため当期の売上が良かったからといって受注活動が好調とは限らないですし、逆に売上が昨対で微減でも、受注残が大幅に増えていれば翌期の見通しは明るく、経営が悪化しているとは言えません。売上は過去の受注活動の結果、受注残は未来の売上の先行指標。この2つをセットで見ると、決算発表の数字がまったく違って見えてくるはずです。
ちなみに、ブライダル関連でよく検索されている「ゼクシィの売上」については、正確な答えは「開示されていない」です。ゼクシィを運営するリクルートホールディングスの決算では、ゼクシィはマーケティング・マッチング・テクノロジー事業(美容・旅行・飲食・住宅・結婚などを含むセグメント・売上約5,636億円)の中のライフスタイル領域(約2,938億円)に含まれており、ゼクシィ単体の売上は開示されていません。媒体側の規模感はこの粒度までしか公表されていない、と知っておくのが正確です。
最後に市場全体の数字も添えておくと、矢野経済研究所の調査ではブライダル関連市場は2024年で約1兆8,448億円(前年比99.9%)の見込み、東京商工リサーチの調査では2025年の主要結婚式場48社の売上高合計は約3,040億円(前年比1.8%増)で、業績は好調組と不調組への二極化が進んでいます。市場が伸びない中で企業間の差が開いていくという地合いは、ブライダル業界の今後と将来性の解説記事で書いた通りで、式場数の供給側から見た動きは結婚式場数の推移と業界の未来の解説記事で詳しく書いています。
まとめ
結婚式場の営業利益率は傾向値で10%弱。売上には施行キャパと組単価の天井があり、原価5割に加えて人件費・広告宣伝費・会場維持費の重い固定費を抱えるためです。一方で、会場維持費率・広告宣伝費率・業務効率化の3条件を満たす会社は営業利益率二桁を実現しており、上場6社の決算でも3.0%〜13.1%という差になって表れていました。決算を読むときは、ブライダル事業のセグメントと受注残。この2つを押さえるだけで、業界のニュースの解像度が大きく変わるはずです。
最後に、なぜ現場で働く人がここまで知っておいた方がよいかの私見を書いて結びとします。一般社員の立場でも、会計の知識があると「なぜ会社がこの指示や意思決定をしているのか」の背景がわかるようになります。管理職以上であればなおさらで、会計の知識がないと、なぜ部下やメンバーにこの指示をしなければいけないのかを自分の頭で考えられず、マネジメントがうまくいきません。役職に関係なく、社会人になったら早めに会計を勉強しておくことをおすすめします。この記事がその入口になれば嬉しいです。
なお、決算数値は毎年更新されるので、本記事も各社の本決算が出そろうタイミングで年次更新していく予定です。
今回の記事ではほとんどご紹介しませんでしたが、ウェディングプランナー経験者の業務委託案件での働き方に興味がある方、自分だったらどんな働き方ができるのかとお悩みの方は、ぜひお気軽にお問合せください。































































































