Magazine

2023/10/29
更新: 2026/05/07

【2026年版】ブライダル業界の今後と将来性 — 市場の構造変化を3つの視点で整理する

こんにちは、アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

当社で運営している結婚式場とウェディングプランナー経験者の業務委託マッチングサービス「Wedding Me Works」での事例などをもとに、ブライダル業界はこれからどうなっていくのかをマクロな視点で整理してお送りします。

業界の方とお話していると、結婚式場の経営者からも、若手プランナーからも、転職を考えている方からも、「ブライダル業界はこのまま縮小していくんですか?」という質問をよく受けるようになりました。マーケットの数字だけを見れば避けられない構造ですが、現場で起きていることはもっと複雑で、業界全体が一律で衰退していくわけではなさそうだと捉えています。残れる会場は残るし、人材確保の方法も変わっていきます。本記事では、市場規模・式場の二極化・人材流動化の3つの視点から、2026年以降のブライダル業界を予想していきます。

 

ブライダル業界の3つの構造変化(市場縮小・式場二極化・人材流動化)を一枚で見せる俯瞰図

 

ブライダル業界の市場規模はこれからどうなるか — 人口・婚姻・披露宴スタイルの3つの変化

ブライダル業界の市場規模は、長期的には縮小が避けられない構造にあります。これは人口動態の変化によるものなので、業界の努力で変えられる類のものではないと思っています。

まず日本全体の人口減少が大きい。国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口(令和5年推計)によると、2020年に1.26億人だった総人口は、2070年には8,700万人まで減少する見通しとなっています。出生数も2024年は約72万人で9年連続の減少、過去最少を更新し続けている状況です。

この上に重なるのが婚姻件数の長期的な減少です。厚生労働省の人口動態統計によると、1972年に109.9万組あった婚姻件数は、2024年には48.5万組まで減少しました。ピーク時の半分以下です。コロナ禍で大きく落ち込んだ後は横ばいで推移していて、2025年もほぼ同水準の見通しと日本総研は予測していますが、若年人口そのものが減っていくため、中長期では再び減少基調に戻ると見るのが自然です。

さらに披露宴のスタイルも変化しています。リクルートブライダル総研の結婚トレンド調査によると、招待客の平均人数はコロナ前の60人台から52人前後まで縮小しており、20人未満の少人数婚と80人以上の通常規模婚の両極が共存する状態が続いています。挙式と披露パーティーを別日程で開く二部制の実施率も、聴取開始時点から短期間で10ポイント以上上昇しました。「組数が減るうえに、一組あたりの規模も小さくなる方向」という二重の圧力がかかっています。

 

マーケット縮小の中で進む式場の二極化 — 指名される会場と、価格競争に巻き込まれる会場

組数減少の中で結婚式場の二極化も進んでいます。すべての会場が一律で縮んでいくのではなく、ブランドが確立された指名型の会場は単価も組数も成長・維持できている一方、特徴のない汎用型の会場は価格競争に巻き込まれて運営継続が難しくなってきています。

データで見るとこの流れは明確です。東京商工リサーチの調査によると、ブライダル産業の倒産件数は2024年度に13件、休廃業・解散は2024年度の途中段階ですでに過去最多を更新するペースで進んでいます。福岡県を地盤にしていた式場運営企業の負債54億円規模の倒産、石川県の式場運営企業の30億円規模の民事再生など、地方の老舗が大型破綻するケースも出ています。

  • 指名される式場: 立地・施設・コンセプトが差別化され、「ここで挙げたい」と思って選ばれる会場。単価が下がりにくく、組数も大きくは崩れない。マーケットが縮んでも残りやすい
  • 比較検討される式場: 立地・施設・コンセプトに強い特徴がなく、複数会場の中で並列に比較される会場。価格と特典で勝負することになりやすく、ブライダルフェアの広告などでも「○○万円OFF」「○○万円特典」のような価格訴求が前面に出やすい。単価も組数も削られて運営継続が厳しくなる

ブライダル媒体の広告を見ていると、ここ数年でこの構造が鮮明になってきたのを感じます。媒体広告に並ぶ「○○万円OFF」「○○万円分プレゼント」といった価格訴求型のクリエイティブはほぼ比較検討型の会場のものですし、それは経営判断として誤っているわけではありません。比較される土俵に立たされている以上、価格で並ばないと選ばれないからです。ただ、その土俵に立ち続けるかぎり利益率は下がっていき、人件費・教育費に回せる原資が削られて、結果的に商品力もさらに落ちていくという悪循環に入りやすい。地方の老舗が大型破綻しているのは、ブランド優位を再構築できないままこのループに入ってしまったケースが多いと見ています。

逆に、指名型として残るための要素は限られています。立地(駅近・観光地・都市中心)、施設やコンテンツの独自性(歴史的建造物・大型ガーデン・絶景・専属シェフによる料理)、コンセプトの一貫性(ブランドとして体験全体が設計されている)、そしてここ数年はSNSでのブランド発信がここに加わりました。これらのいずれも持たない会場が、価格訴求だけで生き残るのは2026年以降さらに難しくなっていくと考えています。

なお、結婚式場の数そのものの推移については別記事で詳しく扱っています。供給側のマクロ動向に踏み込みたい方は結婚式場の数はこれからどうなるかもあわせてご覧ください。

 

指名型と比較検討型の式場を2象限で対比。横軸=差別化要素の有無、縦軸=価格訴求度合い

 

人材確保の構造変化 — 中堅退職を埋める中途採用が機能しにくくなる

業界全体が縮小・二極化していく中で、もう一つ大きな構造変化が起きています。それが人材確保の難化です。新卒採用は依然としてある程度の人気を保っていますが、中堅層を中心とした中途採用の難しさは年々上がってきています。

ブライダル企業の組織内人材バランスを見ると、3〜7年目の中堅層が薄くなっている会社が多くあります。プランナーとして一通り経験を積み、これから現場の核として動ける層が、ライフステージの変化や年収の頭打ち感、長時間労働を理由に業界を離れるケースが続いてきた結果です。新卒で人を入れても、戦力化する前に抜けていくため、中堅が常に薄い状態が解消されにくい構造があります。

この層の不足を埋めるために即戦力の管理職候補・チーフ候補を中途で採用したいというニーズは、結婚式場運営企業のなかで年々強まっていますが、中途採用の難易度自体がかなり高いのが実態と言えます。東京商工リサーチが結婚式場の収益悪化について指摘している通り、業界全体で値上げ余地が限界に近づいていて給与水準も上げにくく、ライバル他社からの引き抜きも難しい。背景にある構造を整理すると、ざっと4つに分かれます。

  • 給与水準が会社差ほぼなく上げにくい: ブライダル業界の給与は新卒330万円・チーフ380万円・支配人530万円程度が中心で、会社差がほとんどない。値上げで原資を作れない以上、給与での差別化が打てない
  • 土日・長時間労働がライフステージ変化で離脱動機になる: 結婚式は基本的に土日祝日に集中するため、結婚・出産後の現場稼働を続けにくい。中堅層が抜けていく最大の動機がここに集中する
  • キャリアパスが管理職に上がらないと頭打ちになる: チーフから先は管理職にならないと年収が伸びず、しかも管理職になると残業代がなくなるケースが多い。「現場が好きだから上がりたくない」層と給与アップ層の間に断絶がある
  • マネジメント忌避層が一定数いる: 現場接客が楽しいから続けてきた層は、マネジメント打診を機に他業界へ転職を検討することがある。当社の相談者でも、半数くらいがこの構造を抱えている

厚生労働省の雇用動向調査を見ても、ブライダル業界が含まれる飲食サービス業の入職率と離職率はいずれも30%前後で、全業種のなかでもトップ水準です。入りやすく抜けやすい構造そのものが固定化されています。

この4つは、どれか一つだけを解いて解決するものではありません。給与水準を上げるには値上げで原資を作る必要があり、値上げするには商品力を上げてブランドとして指名される会場にならないといけない。土日労働を緩和するには稼働モデルそのものを設計し直さないといけない。つまり、人材確保の問題は、市場の二極化と地続きで、根本的な経営課題として捉え直す必要があります。新卒採用は機能しているが、中堅退職を埋める中途採用が機能しなくなっているという現実は、人材戦略の根本的な再設計を求めている段階です。早めに手を打ち始めた会社から、次の数年で差がついていきます。

業界の年収構造そのものに関心がある方はブライダル業界の年収はいくら?を、中小ブライダル企業の人材確保の打ち手についてはブライダル業界の人材状況と中小企業の打ち手【2026年版】もあわせてご覧ください。

 

人材確保方法の多様化 — フリーランス・副業活用がメインストリーム化していく

採用のみで人を揃えることが難しくなる結果、自然と起きているのが人材確保方法の多様化です。具体的には、業務委託でのフリーランス・副業プランナー活用が、業界全体で主流になりつつあります。

これは業界特有の動きではなく、日本全体のフリーランス化トレンドとも連動しています。ランサーズのフリーランス実態調査2024によると、日本のフリーランス人口は1,303万人、経済規模は20.32兆円と、10年前と比較して約40%成長しました。内訳は、副業系すきまワーカーが424万人(26.9%)、複業系パラレルワーカーが356万人(22.6%)、自由業系フリーワーカーが297万人(18.8%)、自営業系独立ワーカーが500万人(31.7%)で、「正社員かフリーランスか」の二択ではなく、副業・複業を含むグラデーションで働き方が広がっています。

ブライダル業界もこの流れの上に乗っています。少し前まで業務委託契約で稼働するプランナーは、独立志向の強い少数派という印象でしたが、ここ数年で見える景色が変わりました。当社にご相談いただく式場経営者・人事担当者の話をまとめると、業界の人材戦略は概ね次の3パターンに整理できます。

  • 採用重視型: 正社員採用だけで稼働を回す形。給与・労働環境で他社に勝てる体力のある一部企業以外では、純粋採用重視の運営はかなり難易度が高くなりつつある
  • ハイブリッド型(事実上の業界標準): 正社員採用と業務委託契約のフリーランス・副業プランナー活用を組み合わせる形。繁閑差・人員不足・スキル特化の各場面で外部人材を使い分ける。2026年時点でハイブリッド型が事実上の業界標準になっている
  • フル委託型: 正社員はごく少数の管理層に絞り、現場稼働をほぼ業務委託で回す形。プロデュース型の新興プレイヤーで部分的に見られる程度で、まだ多くはない

業務委託として発注される案件は、結婚式場の運営フローのどこを切り出すかでパターンに分かれます。特に最近多いのは、新規来館対応をクロージングまで担う新規接客、ご成約から当日施行までを担う打合せ・担当、ゼクシィフェスタのような外部ブライダルイベントでの集客接客を担うイベント接客の3つです。

  • 新規接客の案件: ご挨拶・ヒアリング・内覧・試食ご案内・クロージングまで。報酬は接客報酬と成約報酬で分けての報酬設定が多い
  • 打合せ・担当の案件: お打合せから当日施行まで。報酬は担当報酬+インセンティブ設計が中心。自身のブランドで活動するフリープランナーが担当として入るケースも増えています
  • イベント接客の案件: 外部ブライダルイベントや自社イベントでの集客接客・アポ取り。報酬は日給設定が一般的で、開催頻度の増加で対応人員のニーズが伸びています

ハイブリッド型を取り入れている会場では、自社の正社員稼働で埋めきれない部分を、この3パターンの中から選んで業務委託で補う形が定着しつつあります。新規接客だけ業務委託で組む会場、施行担当を社員固定にしてイベントだけ業務委託で回す会場など、切り出し方は会場ごとにかなり違います。

業務委託活用のメリット(機会損失コストの吸収・人件費の変動費化・採用研修費の削減)については別記事で詳しく整理しているので、外注のメリットや雇用形態の使い分けを知りたい方はブライダル人材の「外注/アウトソーシング」とはもご覧ください。

業界全体として、フリーランス・副業人材の活用は今後メインストリームになっていく方向にあると予測しています。Wedding Me Works はサービス開始から5年以上、登録プランナーは300名を超え、業界では最大規模のマッチングサービスとして実績を積んできました。初めて業務委託活用を検討する式場運営企業の方も、運用ノウハウを持って稼働まで伴走しています。

 

これからのブライダル業界で、企業・働き手それぞれが備えること

ここまで整理した3つの構造変化を踏まえると、ブライダル業界に関わる企業と働き手が、これから備えておくと有利なポイントが見えてきます。

まず企業側、結婚式場運営企業の視点から整理します。

  • 採用前提からハイブリッドモデルへの切り替え: 中堅退職を中途採用で埋める発想から、業務委託・副業人材を平時から組み合わせる運営モデルに移行する。ハイブリッド型は応急処置ではなく経営の常設選択肢として位置付ける
  • ブランド・差別化要素への投資: 立地・施設・コンセプトのいずれかもしくは複数の強みをつくり指名される会社、会場を目指す方向性を定める。比較検討型に留まったまま価格訴求で凌ごうとすると、原資が減り続けて打ち手も減る
  • SNSを通じた認知形成への投資: 採用面でも集客面でも、検索・媒体だけでなくSNSでのブランド形成が分岐点になっている。Instagram・TikTok等を含めた発信に体力を割くか割かないかで、3〜5年後の人材集客力に差がつく

次に従事者側、業界で働く・働き続けるプランナー・関連職の視点です。

  • 環境依存ではなくスキルの自立化: 「この会社にいたから接客が上手くなった」ではなく、「自分の接客スキル・営業スキルを別の現場でも発揮できる」状態にしておく。会場の業績や経営に左右されにくくなる
  • 複数の働き方を組み合わせて安定化させる視点: 正社員一本ではなく、副業・業務委託・複業を組み合わせて収入源をつくる。フルタイム独立だけが選択肢ではない
  • 業界外への接続を意識する: ライフステージ変化や年収頭打ちのタイミングで、業界外のセカンドキャリアを視野に入れておく。ブライダル業界経験者のセカンドキャリアブライダル業界の仕事の種類と働き方で選択肢の全体像を整理すると、判断がしやすくなる

企業側も働き手側も、共通しているのは「環境が勝手に変えてくれるのを待たない」ことです。マクロの縮小トレンドは止まりませんし、人手が勝手に集まってくるフェーズには戻りません。動ける側から先に動いた方が、選択肢が多いまま次の数年を迎えられます。

 

縮小・二極化・人材流動化の3つの構造変化に対する、企業側と働き手側それぞれの備え方を一枚で見せるマトリクス

 

まとめ — 縮小・二極化・流動化を前提に、これからの選択肢を考える

ブライダル業界の今後を、3つの視点で整理してきました。マクロの市場規模は人口動態の影響で縮小に向かう一方、生き残る会場は単価で稼ぐ二極化が進み、人材確保はフリーランス・副業人材の活用を含めた多様化が進んでいます。

「業界はこれから縮んでいく」という見立てだけを取り出すと暗い話に見えますが、現場で動ける部分は実はたくさんあります。ブランドを磨いて指名型に振り切る、ハイブリッド型で人材戦略を組み直す、スキルを自立化させて働き方を多線化する。どれも今日から手を打てる範囲のものです。マクロは変えられなくても、自分のいるポジションは選び直せる、というのが本記事で伝えたかったことです。

業界全体の構造を踏まえて、自分の会場・自分のキャリアにどう落とすか — そこの解像度を上げる助けになれば嬉しいです。

 

今回の記事ではあまりご紹介しませんでしたが、ウェディングプランナー経験者の業務委託案件での働き方に興味がある方、自分だったらどんな働き方ができるのかとお悩みの方は、ぜひお気軽にお問合せください。

フリーランス・副業プランナーの働き方や案件情報について話を聞いてみる

この記事を書いたライター

新着記事