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2024/03/08

ブライダル業界の給与水準はなぜ低いのか?その理由と今後の見通し

こんにちは、アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

当社で運営している結婚式場とウェディングプランナー経験者の業務委託マッチングサービス「Wedding Me Works」での事例などをもとに、ブライダル業界の給与事情ついてお送りします。

 

ブライダル業界の給与事情

少しずつ上がってきてはいるものの、平均すると300万円台後半くらいとなるでしょうか。新卒で300万円前後、チーフやリーダークラスで350万円前後、マネージャーになると400万円を超え、支配人になると500万円以上、くらいのイメージです。

ブライダル業界の給与事情の特徴としては以下3点が挙げられます。

  1. 平均が低い
  2. ばらつきが少ない
  3. 会社ごとの違いがほとんどない

業界構造やビジネスモデル、経営方法や業務環境など様々な事情が背景にあってこのような状況となっているのですが、各論点どうやったら給与水準アップを実現していけるかについてを今回のテーマとして考えてみます。

 

ブライダル業界の給与の特徴

1.平均が低い

職種によって違いはあるものの、平均給与は冒頭で書いた通りだと思います。統計を取ったわけではないのですが、自分が知る限りこの範囲に収まることがほとんどでした。

業界の平均給与水準はビジネスモデルに紐づいて決まる側面が大きいので、一般的な結婚式場が人件費に割り当てられる総額が構造上決まっており、それを関わった人数で分配しているから自然とこれくらいの金額になっていると言えます。

2.ばらつきが少ない

これは同じ職種でもパフォーマンスによって給与金額の違いが小さいことを意味しています。毎月10組成約を獲得するプランナーと毎月2組ほどの成約にとどまるプランナーでも、給与の違いは10万円/月もない会社が多いでしょう。インセンティブも個人ではなくチームで設定している企業も多いですし、営業成績よりも役職の違いによる給与差を設定している企業が多い印象です。

3.会社ごとの違いがほとんどない

上記2つのような背景から職種によって給与水準がほぼ決まっているので、会社ごとの大きな給与差がありません。プランナーの給与は大手企業でも中小企業でもそんなに変わりません(福利厚生とかは別)。

なので就活生や求職者が会社を選ぶときに給与の高さが理由になることは少なく、「給与を上げなければ優秀な人材が採用できないかも…」、「給与を上げなければ他社に行ってしまうかも…」、このように経営側が考えにくいというのもあるかと思います。

 

ブライダル業界の給与水準の特徴から起こっているであろうこと

優秀な人材が流出する、集まらない

これは一般論なので多数の例外があることは承知していますが、「仕事が好き」だけでは超えられない壁があると思うのです。ウェディングは好きだけど他の業界で働くと年収100万円上がるのでそちらの会社に転職します、と言う人も少なくありません。

また中途採用の募集を出しても求人要項にある給与が低いので、他業界のより高い給与の求人でも内定を取れそうな人はそもそも応募もしてこないことも多いです。

クリエイティブが生まれにくくなる

給与のばらつきがない=いい成果、いい結婚式をつくっても給与には反映されない。

この状態が続くとクリエイティブが生まれにくくなると思います。もちろん感謝の声をいただいた、とても大変な準備を乗り越えて当日が感動に包まれた、などやりがいを得ることはあるとは思いますが、あえて嫌な書き方をすると仕事が作業員化していくとも言えます。

こうした事実に気付きにくい

ここまで書いたような背景から給与が決定している事実があったとしても、中で働いている人は意外と気が付きにくいものです。なぜなら、応募してこない人のことはわからないし、周りもだいたい同じ給与なので自分だけが低いと感じにくいからです。

 

どうやったら給与水準は上がるのか?

1つの施策を実行したらすぐに上がることはありませんが、いくつかの視点から思いつくことを書いてみます。どちらかというと一律で全員の給与水準が底上げされるのではなく、ハイパフォーマーの人にきちんと給与として還元できるようにするために何ができるか?という考えに基づいて書いています。

従事者数が減る(減らす)

人件費に充てられる総額を従事者数で割るという考え方で人件費を計算していることがほとんどなので、従事者数が減って売上が変わらなければ一人当たりの人件費(=給与)は理論上増えることになります。

例えば今の2/3の人数で今の結婚式組数を今と変わらない組数とクオリティで提供できれば給与1.5倍にしても利益額は変わらない、となります。

指名料制にする

プランナーなど従事者に還元する原資をつくる、という発想です。

今の式場の担当者アサインは多くのケースで式場側が決定していますが、プランナーの経験値やスキルに基づいてランク(のようなもの)を設定し、そのランクによって指名料を頂戴する仕組みを作ります。美容師のように。指名料のうち50%を給与に還元するとかにできるとよいですよね。

外部リソースを活用する

結婚式場の人件費を変動費化することで単価を上げる、という発想です。

最近は外部のフリープランナーなど式場やプロデュースの会社と業務委託契約で仕事をする人も増えてきています。式場側は繁忙期のリソースを外部に頼りたいと考えるようになるからです。

プランナーの収入源を複数にする

フリーランスとして活動する方の収入源の一部を業界外に求めるという発想です。先ほどの裏返しですが、式場からの委託業務を中心にしている方は閑散期は仕事が少なくなることも多いです。

そのため、ブライダルの繁忙期/閑散期と裏返しになるような業界の仕事を組み合わせる&ブライダルと相性のいい仕事をすることで、年間の収入のバランスを取りかつ総額も増やすことが狙えます。

 

ブライダル業界の給与が上がったほうがいいと考えている理由

個人的には、今より100万円くらい平均給与を上げられないかなと考えています。大きな理由は以下の2つ。

人が定着しやすい環境にしたい

給与を理由に業界を去る人、僕はけっこういると思ってるんですよね。

多くの方の転職相談やこれまでの自分の経験から、だいたい2-3年おきくらいに給与について考える日が来ることが多いと感じています。

  • 新卒入社してから意外と生活キツキツなことに直面したとき(20歳~24歳)
  • 役職がリーダーやチーフ、マネージャなどに上がったけど手取りがほとんど増えてない現実に直面したとき(24歳~28歳)
  • 結婚や出産などライフステージが変わってリアルに必要な生活費やローンなど将来について考えたとき(28歳~32歳)
  • そういった変化がなくても30歳前後になってこれから先のキャリアについて考えたとき

こうしたタイミングで将来のキャリアについて悩む人が増えるのですが、これまでのスキルを活かして違う業界に行こうかなと考える人が多い印象です。ブライダル出身者は他の業界でも活躍できるケースも多いですし、転職エージェントに相談すると人材やIT業界のCS職は積極的に紹介してされますし。

このように「他の業界でも活躍できるがブライダルでも輝ける人材」が給与の低さを理由に外に行くのは損失だと思っているので、これを何とかしたいなと思っているのが1つ目の理由。

対顧客の提供価値の高さと従事者へのリターンの大きさを連動させたい

「いい結婚式を創っている人たちほど儲かる仕組みにしたい」ってことです。

今のブライダル業界全体の流れとしては結婚式のオリジナリティ追及があると思っていて、これは同じような結婚式を安定して提供するより、一組一組の個性を尊重した二人らしい結婚式を提供しようという流れです。

前者を提供する場合は安定して決まったタスクをこなすオペレーター要素が強く求められますが、後者の場合はオリジナリティを追求するのでクリエイター要素が強く求められます。

つまり、誰がその役割を担うのかによって仕上がりが全然変わり、価値も変わると思うんです。

誰がやっても変わらない商品を提供しているならその工数に対して給与が支払われるのでみんな同じでもいいんですが、誰が作るかで価値が変わるなら、より高い価値を提供している人ほど大きいリターンをもらえるようにならないといけない。そう思うのです。

なので、今後もこの傾向が続くようであれば、それができる人ほど報われるようになってほしいなと、これが2つ目の理由です。

 

ブライダル業界の給与事情についてまとめ

お金バリバリの話を書いてみましたが、顧客のことを本当に思っていてホスピタリティを持っているのはブライダル業界で働いている方々が一番だと思っていますので、だからこそ、それがきちんと報われるような環境を整えたり、雰囲気的にタブー視されている給与を上げていきたいと思っています。

まだまだ力不足で何かを成し遂げられているわけではないですが、こういった想いをもって事業を運営しています。

今回の記事ではほとんどご紹介しませんでしたが、ウェディングプランナー経験者の業務委託案件での働き方に興味がある方、自分だったらどんな働き方ができるのかとお悩みの方は、ぜひお気軽にお問合せください。

この記事を書いたライター

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