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2024/02/09

結婚式場は今後減っていく?式場推移予測とその場合のプランナーの働き方について

こんにちは、アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

当社で運営している結婚式場とウェディングプランナー経験者の業務委託マッチングサービス「Wedding Me Works」での事例やアンケートの回答、そしてブライダル業界全体の動向を見ての知見から、今後の業界予測とプランナーの働き方の変化についてお送りします。

 

これからの結婚式場は減っていくのか?

減ります。これは間違いないです。

倒産して事業継続が不可能になる、継続自体は可能だが自主的に婚礼事業から撤退する、事業譲渡する、などケースとしては様々ですが、その理由の多くは業績不振によるものです。

結婚式場運営事業の業績(というか利益)は
・利益=施行組数×単価×利益率
└施行組数=婚姻組数×結婚式実施率×自社シェア
と計算されるので、どのKPIが下がっても業績は低迷します。

ちなみに、婚礼事業者として最もどうにもできないKPIである「婚礼組数」は2023年1~3月期で前年同期比▲14.2%だったようです。

このペースでの減少がもし続いたら業界全体での先行きはかなり厳しく、少なくとも「箱を持つ」というビジネスモデルを続けられるのはごくわずかになってしまう可能性が高いです。。本業が他にあって、副業でウェディングプロデュースもやりますというスタイルが主流になっていくかもしれません。

さて、そんな悲観的な未来について考えても仕方がないので話を戻しまして、倒産や事業撤退以外にも本業集中のための事業譲渡のケースとかもあるんですが、シンプルに言えば赤字の結婚式場かつ今後の回復見込みがないところは式場運営から撤退していくことになると思います。

M&A仲介サイトとか見てもらえれば、売りに出てる結婚式場簡単に見つかるので、時間があれば見てみてください。

それともう1つ、今黒字で業績的に問題なくても撤退を決断するケースがここから3年くらいは増えていくんじゃないかと思っています。

 

黒字の結婚式場の事業撤退が増えると思うもう1つの理由

その理由は、賃貸借契約の更新タイミングでの判断がこれまでと変わると思うからです。

結婚式場の運営は

  • 賃貸借契約を締結し物件を借りて運営している
  • 土地や建物ごと購入・保有して運営している

大きくこの2つのパターンがあり、賃貸借契約の場合は地代家賃を支払い、内装費などは償却で計上します。出店時の初期費用が比較的抑えられますが、地代家賃を払い続けることになります。ビルインタイプや商業施設内の物件はほぼこちらだと思います。

一方、土地や建物を購入する場合、出店時に相当な資金が必要になりますが償却さえ終わってしまえばコスト負担はかなり軽くなります。郊外の土地にあるゲストハウスなどは土地ごと保有していることもありそうです。

さて、このタイミングで重要になると思うのは前者の賃貸借契約で運営されている結婚式場です。

個別のケースによって違いはあるものの、一般的な契約期間は10年くらいで契約していることが多いでしょう。

例えば今まで運営してきた結婚式場の賃貸借契約を2024年に更新すると、次回の更新は2034年になり、それまでの10年間は運営し続けなければいけなくなります。そして途中解約した場合は違約金を支払わなければいけません。

ここで、契約を更新するかどうかを判断する責任者になったつもりで考えてみてください。

  • 今は持ち直して何とか黒字化することができた
  • しかし、ここ3年くらいは市場環境も大きく変わりましたし今後も変わらない保証はない
  • 直近では前年比で14%も婚姻組数(マーケット)が縮小している
  • 少人数を希望する割合も増えてきたので単価も下がっている
  • もし更新したら次の10年の間にどんなに赤字になっても続けなければいけない
  • ただ、もし更新せずに撤退する場合は今働いてくれている社員の仕事もなくなるので退職してもらわないといけない

あなたならどう判断しますか?

どっちにしたって厳しい判断にはなるんですが、私個人の予想だと「今黒字化できている、原状回復費用等で特損出してもトントンでいける、退職する社員に金一封くらいなら出せる、次の10年継続して黒字化できる見込みも自信もない、それなら今のうちに撤退しよう」と考える経営者が増えるじゃないかなと思っています。傷を負う前に、という。

特に地方の場合は事業承継の問題もここに重なってくるケースもありますし。

なので、単純に今期の業績が赤字だからという理由だけではなく、今後の見通しの不透明さから黒字でも撤退を考える企業が増えそうだなと思っています。

 

結婚式場の数が減ると何がどのように変化するのか?

対顧客の観点

特に何も起こらないと思います。

現状の需給バランスはすでに相当な供給過多状態なので、突然閉店になるなどがなければ1/4くらい減ったとてこれから挙げるカップルにとっての影響はないでしょう。あるとすれば、これまで挙げてきたカップルにとっての思い出の結婚式場がなくなることが寂しい、という点かなと。

式場運営者の観点

競合店が減るのでいいことだと思います。

具体的なメリットとしては、まず式場運営は固定費率の高いビジネスモデルなので、マーケット縮小スピードよりも速く結婚式場の数が減ると1会場当たりのシェア=施行組数が増えます。

そうすると総売上に対する施設運営にかかる固定費率が下がるので、利益率と利益額が改善されます。そうなると社員の待遇改善や顧客への提供価格の変更など、事業者として取り得る施策のバリエーションが増えます。

その施策が適切に効果を発揮すると今より効果的に集客出来たり、より質の高い人材を確保することが可能になります。

だからいいことだと思っています。

もちろん、個別の事例で見れば撤退する式場で働いていた人の雇用をどうするのかとか、取引先にも影響出るよねとか、そんな簡単には解決できない事象もあるんですけど、あくまで業界を俯瞰で見た場合は残る式場にとってはプラスに働くことの方が多そうだなという感じです。

業界従事者の観点

従事者数が減ります。

単純に式場数が減るのと並行しておそらく業務効率化が進む1人あたりが担当できる組数が増える・事務処理時間が減るので業界全体での必要人員数はかなり減ると予想されます。

また、正社員としての雇用契約以外の稼働も増えると想定されるので、もしプランナーとして働きたい人が今と変わらずいた場合は相当狭き門になっていきそうです。そして優秀な人に仕事が集まる傾向はより顕著になっていきそう。

 

この将来予測を前提としたときにどのようなアクションが考えられるか?

①結婚式以外のマネタイズがある施設でのブライダル部門運営が増えそう

今回書いてきたように、施設を賃貸借契約で保有して結婚式だけで事業継続することのリスクが大きいと判断するケースが増えるので、ホテルや複合型施設など結婚式以外でも収益を確保できるような会場の割合が増えていきそう。逆に専門式場やゲストハウスの割合は減っていきそう。

②ニーズが変わりにくい施設は継続しそう

神社での和婚や歴史的建造物での結婚式など、ニーズの割合が一定ある&トレンドに左右されにくい会場はこれからも残りそう。バリューマネジメントさんとかは強いんじゃないかと勝手に思っている。

③会場を自社で保有しないプロデュースチームが増えそう

これは書いている通りで、会場を持つことのリスクが今後より大きくなっていくのでプロデュースチームが増えそう。で、施行ごとに会場を借りると。これは個人や小規模チームだけではなく、式場運営企業の新規事業としても増える可能性はありそうと思ってますね。

④ドレスやアイテム事業者が独自に集客を目指すケースが増えそう

式場が運営継続するかが不明確になってくると、それによってドレスやアイテム事業者の受注組数も大きく影響を受けます。となると、そんな不安定な状況になるなら自分たちでも集客できるようになろう!と取り組みを始めるところが増えるんじゃないかなと予想します。

⑤運営受託案件が増えそう

これはたびたび書いているけど、式場オーナーと運営主体が異なる企業で運営される結婚式場が増えそう。一番多そうなのはホテル側とそのホテルのブライダル部門を外部のウェディング会社が受託しますというケース。

***

こんな感じであくまで個人的な予想ではあるんだけど、いずれにせよ式場運営企業の経営者は厳しい意思決定をしなければいけないことになりそうです。また、それに伴い従事者側も働き方を自分で考えることが重要になっていきそうです。

 

式場推移予測とその場合のプランナーの働き方についてまとめ

  • これから先、結婚式場は減っていく
  • 黒字でも賃貸借契約の更新をしないと判断する企業が増えそうだから
  • そうなると、企業だけでなく従事者も含めて業界的に変化が起こっていきそう

ざっとまとめるとこんな感じです。

経営の意思決定って、結論だけ聞かされると「えぇ、なんで!?会社は式場のこと大事に思ってないんだ…」みたいな印象持たれがちなんですけど、まともな経営者なら様々な要素を加味してされることがほとんどなので、その背景とかも少しは伝わるといいなぁと思います。

今回の記事では深くは触れませんでしたが、ウェディングプランナー経験者の業務委託案件での働き方に興味がある方、自分だったらどんな働き方ができるのかとお悩みの方は、ぜひお気軽にお問合せください。

この記事を書いたライター

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