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2022/09/09

業務委託ウェディングプランナーとブライダル会場が、より良い関係を共に構築するために

2021年コロナ禍以降のブライダル業界は、優秀で経験豊かなウェディングプランナーが他業界への転職を余儀なくされ、多くの人材を失った。しかし、他業界で新たな生き方を模索しながらも、新郎新婦の最良の日に関わるウェディングプランナーの仕事の魅力に未練がある人は多い。

その中で「必要な人材かつ優秀な人材を繁忙期に確保したいが、採用や育成コストはかけられない」運営側と「時間に拘束されずに短時間だけ働きたいが、労働時間ではなく能力に応じて報酬が欲しい」元プランナー側の条件が合致した雇用形態が『業務委託契約』だ。

他業界でも注目の人材確保の方法だが、無形商材・高額商品の“セールス力“が問われるブライダルの新規接客は、会場の環境や売り方や方針を熟知していないと、どんなに経験あるプランナーでも即十分な力を発揮できず、せっかく繋がった縁が上手に活用できないケースも散見される。

そんななか、業務委託のマッチングサービス『Wedding Me Works』を通じて契約を結んだ株式会社エスクリの江原支配人は「業務委託プランナーの導入が会場にいい刺激を与えてくれた」と話す。

江原支配人のもとで、5年ぶりにウェディングプランナーとして復帰した天野さんと一緒に、業務委託プランナーと会場がより良い関係性の構築するための秘訣を聞いた 。

対談してくれたひと

【左:江原支配人】株式会社エスクリ・ラグナヴェール東京支配人

キャリアはホテルサービスが出発点。その後レストランの立ち上げに参加し、ブライダルサービスに本格的に加わって以降、ブライダル業界の第一線で働く。

2011年に株式会社エスクリに新規リーダーとして入社。マネージャー、副支配人を経て2015年より支配人として、神戸、表参道、大阪駅、広島の会場を経験。現在は八重洲にある「ラグナヴェール東京」会場にて、日々ブライダル業界を担う人材育成と確保に心血を注いでいる。

【右:天野さん】ウェディングプランナー歴4年・業務委託歴1年

専門学校卒業後の2010年、テーマパークでエンターテイメント部門の出演者として3年間勤務。
ひとを笑顔にさせる仕事が好きで、他の世界も経験したいと2013年に株式会社テイクアンドギヴ・ニーズに転職。正社員のウェディングプランナーとして3年間キャリアを積む。

2016年にはキャリア目標が明確となり、再びテーマパークの運営会社に転職。現在はエンターテイメント部門の舞台監督として活躍中だが、2021年度は新型ウィルス感染症の蔓延に伴う休園や時短営業をきっかけに、副業は可能に。そんな中、知人の勧めから『Wedding Me Works』を知り登録。複数の結婚式会場と「新規接客専門のウェディングプランナー」として業務委託契約を結ぶ。

本業のテーマパーク再開後の現在も舞台監督の傍ら、余暇を活かし新規接客業務を担当。本業だけでは出会えない方たちとの出逢いに刺激を受ける日々。

業務委託プランナーと会場の距離感。「ほんのちょっとの積極性」が関係構築の鍵

ーーおふたりの、お互いの最初の印象はいかがでしたか?

【江原支配人】
業務委託契約で働くウェディングプランナーの方は、他社を仲介して何度か繋いで頂き、会場にすでに何人か入ってもらった経験があります。

ただ働き方的に「時間内のみしっかり働けばいい」と、どこか割り切ったドライな面を感じる場合も多く、自社の社員もどこまで関わるべきか、お互いの距離感を掴むのが課題になっていたんです。

なので、当初は「新規接客の自社リソースが足りない際に補填ができれば…」というイメージで、そこまで多くは望んでいませんでした。

ところが『Wedding Me Works』で繋いでいただいたプランナーの皆さんの積極性に驚きました。

特に天野さんは、まるで自社に入社した社員と同じように、最初から私たちに接してくれたんです。

皆さんの簡単な経歴や人柄は聞いていましたが、そのイメージと差異がないだけでなく、いい意味で業務委託の方に対するイメージが大きく変わりました。

おかげですぐ「こちらとしても、同じ会社の仲間として接していこう」と意識が変わって、積極的にコミュニケーションが取れました。

【天野さん】
そういっていただけると…。

むしろ、僕としては会場の輪の一員として馴染めたのは、江原支配人はじめエスクリの皆さんが、まるで自社の社員同様に受け入れてくれ、コミュニケーションをとりやすい空気を作ってくれたからだと思っていましたから。

業務委託プランナーとして働く経験が初めてだったので、事前に他社で経験のある方に何人か話を伺ったんです。すると「委託先の会場によっては、外部から入ったプランナーがまったく相談できる雰囲気ではない会場もある」といったケースも聞きました。

だから「ラグナヴェール東京」では、温かく受け入れてもらえる空気が最初からあって、ほっとしました。

ーーお互いに「初対面から打ち解けやすい空気」を感じていたんですね。

【天野さん】
本当は、入職初日は不安でいっぱいでした。

僕はゲストハウスでの経験しかなく、「ラグナヴェール東京」のようなビルインタイプで接客するのは初めてでしたから。

ゲストハウスとビルインタイプの接客の違いについて、入職前に『Wedding Me Works』から聞いてはいたものの、実際に現場で接客して「ビルインタイプの接客とは、こういうものなのか…」と痛感したんです。

不慣れな接客で成約に至る重要な部分で詰まって困っていたとき、江原支配人が接客の流れを見ていて、タイミングよくフォローに入ってくれました。

以前働いていた会場でほとんどない経験なので、あまりのタイミングの良さに「すごいな」と心強さと嬉しさを感じましたね。

接客の合間に「状況どう?」と江原支配人の方から声をかけてくれたんです。一緒に確認して進められるので、実際の接客のなかで情報を整理できました。

不安な自分を「誰かがきちんと見守ってくれていた」安堵感だけでなく、お客様も「支配人という上の立場のひとが気にかけてくれた」と安心していただけたのが分かりました。

「自分からもっと積極的に、この会場について知っていかなければ」と思えたきっかけでしたね。

即戦力を求められる業務委託プランナー「経験者がすぐ力を発揮できない」ときは?

ーー業務委託プランナーは即戦力として求められるイメージがありますが…

【天野さん】
僕も最初はそう考えていました。過去の新規接客でそれなりの実績を残していたのですが、同時にかなり気負っていたんです。

ただ、会社のブランディングや会場のハード面が違うと、今までのスキルが通じない部分があると気づきました。

特にゲストハウスとビルインイプの会場では、接客にかける時間や成約に至るまでのスピードが、大きく異なっていたんです。

自分がやってきた実績を白紙に戻して、やり方を即座に変えなければいけない部分があると痛感しました。

【江原支配人】
そんなに悩みながら接客していたんですね…。

落ち着いていたので、全然そんな風に見えなかったです。僕がフォローに入った時にも、最初からいつ成約してもおかしくないレベルの接客でしたから。

エスクリの社風なのかもしれませんが、自社のウェディングプランナーの接客でも、途中で重要なポイントでおふたりとの対話を聞きつつ、「これは」と思う箇所があれば入る場合もあります。

実際、ビルインタイプの会場での接客は、他のタイプの会場と比べ難しい面もあり、自社で育成したプランナーでも、なかなか馴染めない場合もあるほどです。

天野君も、最初はとてもやりづらそうだな、心が折れてしまわないかな…と心配して見守っていた部分がありました。

ただ、フォローに入った際にお客様から話を聞くと、天野君に対してお客様が好意的な印象や、満足感を得ているのがわかるんです。

「彼のもっている接客レベルは高いんだな」と安心し、その後もしっかり任せられる方だなと確信できました。

ーー天野さんは、入職してからどのぐらいのタイミングで、会場での新規接客のコツをつかんだのですか?

【天野さん】
江原支配人のフォローのおかげで、今までのやり方では合っていないとすぐに分かったので、改めて会場にあった接客や売り方を知るべきだと考えました。

そこで、会場の教育担当の方に相談して、接客を学ぶ時間を作ってもらいました。担当の方は忙しいにも関わらず、快く機会を作ってくださったんです。

おかげで、トークスクリプトの共有だけでは理解できなかった接客の流れや意味について、しっかりと深い部分まで勉強し確認できました。

成約までのやり方は会場にあった方法や流れがあると改めて肌で理解してから、今後業務委託の仕事を続けていくうえでも、考え方が大きく変わりましたね。

【江原支配人】
今まで他社が仲介してくれた業務委託のプランナーで、「この会場のやり方を教えてほしい」と積極的に自ら動いてくれた方はいなかったんです。

また天野さんは、最初の頃から「早く成約して、僕にいろいろ教えてくださる会場の皆さんに恩返しがしたいです」と何度も言ってくれました。

マージンではなく「会場とスタッフの力になりたい、ここで力を発揮したい」という気持ちを感じられる言葉に、心から嬉しくなりました。

そんな言葉を聞いてぼくたちも「早く彼に接客を掴んでほしい」「成約をとらせてあげたい」と、お互いに成果を求めている関係性と気持ちが培われていったんです。

ーーなかには遠慮してしまい教えてほしいと言い出せない方もいらっしゃると思います。申し出があれば、勉強会は業務委託の人が受けられるものでしょうか?

【江原支配人】
ぜひ、積極的に聞いていただきたいです。

会場側が「業務委託だから好きに働いて、好きに結果出してくれ」的なスタンスでは、業務委託プランナーとって働きづらい環境になってしまい、結果も出しづらいままでしょう。

こちらとしても、自社の社員と同様に、勉強会や教育を受けられる機会や環境を積極的に整えていきたい。まずは何ができるか、天野さんのおかげで考えるきっかけになりました。

業務委託と会場側の新たな関係。「ウェディングプランナーの価値」をより高めたい

ーープランナーと会場が「より仕事への理解や会場との関係性を深める」一方で、社員とは異なる業務委託としての自由な働き方や、会場側との程よい距離感というのは、どのように保たれているのでしょうか。

【江原支配人】
弊社と業務委託契約をしている全プランナーの1カ月のシフト希望日は『Wedding Me Works』システムを通してパソコン画面上で一括で見れるので、シフトがとても作りやすくなりました。

例えば、急なリソース不足の際にも、3日前までであれば出勤依頼を再度かけられるため、プランナー側が確認して承認してくれれば人員が揃えられるのはありがたいですね。

間にひとが仲介していないから、出勤に関してひとりひとりに電話で確認したり、メールで打診する手間や、急な出勤を依頼する申し訳なさが、一切なくなりました。

おかげでイベントなど「どうしてもリソースを揃えたい」といったタイミングで、人員がしっかり揃えられるようになりました。

【天野さん】
『Wedding Me Works』の勤怠システムのお陰で、会場側とも適度な距離感を保っていると感じています。

シフトに関する会場側とのやりとりは完全にスマートフォンやPCからシステム上の申告のみなんです。だから気兼ねがなく、本当に自分のペースで働けるメリットが大きいと感じました。

勤怠管理を人が仲介すると、どうしてもシフトの日数や日程に遠慮や忖度してしまう場合も出てきます。しかしシステム上のみなら気兼ねがなく、自分の都合を優先したシフト希望をストレスなく申告できます。

ーー今後は、会場側として、また業務委託プランナーとしての働き方で目標はありますか?

【天野さん】
「ラグナヴェール東京」で自信がついたおかげで、現在は『Wedding Me Works』を活かし業務委託プランナーとして、複数の会場で働いています。

それで、会場ごとの接客スタイルや方針から、たくさんの情報を学ばせていただいているんです。そこで得たブライダルのトレンドを、エスクリさんをはじめさまざまな接客に活かしてフィードバックしていけたらと思っています。

今まで私が会場の皆さんから教えてもらってきたぶん、背中でお返ししていきたいんです。

【江原支配人】
確かに天野君の接客を見ていると、エスクリで育ってきたプランナーが持っていない人柄の出し方や人の心の掴み方など、こちらが刺激を受ける部分がたくさんあるんです。

今まで弊社の方針や接客スタイルにフィードバックできれば、さらに今の時代やお客様にあった、もっとよくできる部分があるかもしれない。

お互いの良い部分をフィードバックしあい、お互いを高めあえる関係性であり、そう思ってもらえる職場を作っていきたいですね。

【天野さん】
江原支配人にそういってもらえると、本当に嬉しいですね。

日本で1番多くの会場の新規接客に出たプランナーになれる気がしてきました。

カメレオンのようにあらゆる会場の新規接客に対応できるプランナーとして、結果を出せるプランナーになる目標も、決して夢ではないと思ってます。

この記事を書いたライター

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