ウェディングプランナーが産休・育休中に業務委託契約は結べる? 復帰とフリーランス転向の判断材料

こんにちは、アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
当社で運営している結婚式場とウェディングプランナー経験者の業務委託マッチングサービス「Wedding Me Works」での事例などをもとに、産休・育休中のウェディングプランナーが業務委託契約と向き合うときの判断材料についてお送りします。
最近、Wedding Me Worksに妊娠中の方から「いますぐ動くつもりはないんですけど、出産後の働き方の選択肢として業務委託の話を聞いておきたい」というご相談をいただくことが少しずつ増えています。妊娠が分かった、もうすぐ産休に入る、育休中で時間ができた、という時期は、ふと立ち止まって自分のキャリアを見直すタイミングなのだと思います。
そこで多くの方が「産休・育休中に業務委託契約って、そもそも結べるんだっけ?」という疑問を持ちます。検索してみてもなんとなく漠然とした記事ばかりで、自分のケースに当てはめにくい。
今回は、契約を「結べるか/結べないか」の二元論ではなく、いまどんな立場にいるのか・どんな働き方を見据えているのかで分解しながら整理します。育児休業給付金や出産手当金との両立、復帰とフリーランス転向の比較、そして妊娠中から何をしておくのが現実的にスムーズかまで、Wedding Me Works の相談現場で見えている実態に寄せて書いてみます。

産休・育休中に業務委託契約は結べるのか — 3つのパターン別に考える
産休・育休中に業務委託契約を結ぶこと自体は、法律的にはほとんどのケースで可能です。ただ、契約を「結べるか/結べないか」の法的判断だけではなく、いまどの立場にいるかで難易度と現実性が大きく変わるのは知っておきたいところ。
産休・育休中に業務委託契約を考えている方は、大きく3つのパターンに分かれます。
-
パターン①:
結婚式場運営企業に正社員として在籍したまま、副業として業務委託を考えている人 -
パターン②:
産休・育休に入る前に退職する、もしくは復帰せずに退職して、フリーランスとして業務委託を始めようとしている人 -
パターン③:
すでにフリーランスで業務委託を続けてきて、その途中での働き方を考えている人
検索してこの記事に辿り着いている方の多くは、①か②の境目あたりで悩んでいるんじゃないかと思います。「いまの会社に戻るか、戻らずにフリーランス転向するか」という二択で揺れている状態。
①の「在籍したまま副業」は会社の就業規則上はできないことになりやすく、なぜならブライダル業界の場合は同業他社への情報漏えいリスクで会社側が認めにくい構造があるためです(これは後ほど詳しく書きます)。③の方については、すでにフリーランスとして稼働しているので「結べるか」の問題にはあまりならず、給付金や手当の制度などについて知っておくとよいでしょう。
この記事では、ウェディングプランナーとして復帰するかを妊娠中から考え始めている方を主読者に想定して書いています。業務委託契約そのものの基礎(雇用契約との違いや準委任/請負などの概念)についてはこちらの記事で整理しているので、まず雇用契約との対比からつかみたい方は先に読んでみてください。
育児休業給付金・出産手当金との両立 — 月10日/80時間ルールと減額判定
産休・育休まわりで業務委託を考えるとき気になるのが「お金の話」だと思います。育児休業給付金や出産手当金がもらえなくなる可能性はあるの?という不安。厚生労働省の公開資料に整理されている内容としては以下のような構造になります。
- 育児休業給付金:月の就業日数が10日以下、または10日を超える場合は就業時間が80時間以下なら、給付金は支給される
- これを超える(月10日超 かつ 80時間超)と、支給はストップ
- 支給可能な範囲内で就労した場合、本業の会社で働くなら賃金額に応じて減額される可能性がある
- 一方、別の会社の副業や業務委託の報酬を得る場合は、報酬額に対する減額規定がない(=報酬を得ても給付金は満額支給される)
- 当然ながら、月10日かつ80時間を超えれば、業務委託の報酬であっても支給はストップする
育児休業給付金の制度設計上は、別会社副業や業務委託の方が(本業会社で働くより)金額面で有利に見える構造になっています。「本業会社の代わりに業務委託で稼げばいいのか」と思ってしまいそうになるのですが、次のセクションで書く「就業規則と業界構造」と産後8週間の労働基準法上の就業禁止規定は注意したいところです。
産後8週間(医師が支障なしと認めれば6週間)は、雇用型労働は労働基準法65条で就業禁止となります。これは法律で守られている方の規定で、本人が働きたいかどうかとは別の話になります。ただ、業務委託(非雇用型)の報酬を受け取ることは「労務」に該当しないとされる解釈が多く、産後8週以内でも理屈の上では業務委託の対応はできます。
また、出産手当金(健康保険から支給される産前産後の手当)についても似た構造で、雇用型副業をした日は「労務に服した日」として手当がカット、業務委託の報酬は労務に該当しないので手当への影響なし、という整理になります。
そしてもうひとつ、最近の動きとしてフリーランス側に関係するのがフリーランス新法(2024年11月施行)です。6か月以上の業務委託契約を結んでいるフリーランスが申し出れば、発注企業側に育児・介護との両立への配慮が義務付けられました。すでにフリーランスとして稼働している人が次の出産を迎えるとき、これまでと違って契約先に配慮を申し出る法的根拠ができたわけです。加えて、フリーランス向けの国民年金保険料免除(子が1歳になるまで)も2026年度中の開始が予定されています。フリーランスの産休・育休をサポートする制度自体は、ここ数年で徐々に整いつつあります。
ただ正直なところ、こうした制度を正確に把握して活用できているフリーランスはまだ多くない印象です。記事を読んで「自分はどの制度の対象か」を整理し、必要に応じて社労士やハローワーク・年金事務所に確認するのが現実的な進め方かなと思います。
副業として業務委託を考えるなら、軸は「産休育休」より「いま誰に雇われているか」
ブライダル業界(正確には結婚式場運営企業)に在籍しながら業務委託を考える場合、産休・育休後にどうするかの前に、「いま誰に雇われているか」によって取りうる選択肢が変わってくることは理解しておく必要があります。
- 結婚式場運営企業に在籍したままで、他式場の業務委託に入る → 情報漏えいや競合関係になる観点から構造的にほぼNG
- 元プランナーで、いまは他業界(IT、人材、事務職など)に転職していて、その他業界の会社で産休・育休中 → ブライダル企業側は受け入れ可能なケースが多いので、在籍企業の就業規則を確認
前者では競合関係にある他式場の現場に入ることで顧客情報や提案ノウハウが意図せず漏れるリスクが看過できないからです。これは就業規則の副業条項以前の話で、業界の常識としても受け入れにくい。実際Wedding Me Worksでも、現役の結婚式場運営企業に在籍中の方からの業務委託相談は基本的にお断りしています。本人にその気がなくても、構造として情報漏えいや同じ顧客を別の会場で接客する可能性の懸念がついて回るからです。
一方で、他業界に転職した元プランナーから「子供が大きくなって少し時間ができたので、週末だけ業務委託で接点を持ちたい」というご相談はよくいただきます。Wedding Me Worksの中で「複業型」と呼んでいるパターンで、平日はIT系のカスタマーサクセスや人材系の仕事、週末は結婚式場の現場で、というスタイルです。この場合は競合関係が発生しないので、現職の労務規定さえクリアできれば(もちろん社内の労務規定は必ずご確認くださいとお伝えしています)受け入れに進められます。
つまり、副業として業務委託を検討するときの実務的な分かれ目は、産休育休のステータスそのものというよりは、いま雇用契約を結んでいる会社が同業かどうかなんですよね。「育休中の副業は禁止/許可」みたいな会社単位のルールよりも、業界構造から来るこの「同業NG」の方が先に効いてくる。
ブライダル業界のなかで雇用と業務委託・派遣がどう住み分けられているのかについてはこちらの記事で書いているので、業界の雇用関係の独特な構造を押さえておきたい方の参考になると思います。
多くの人が悩むのは「会社復帰 or フリーランス転向」── 妊娠〜育休明けの判断軸
検索して産休・育休 × 業務委託のキーワードでこの記事に来ている方の多くは、実は「育休中に稼ぎたい」よりも、育休明けにいまの会社に戻るか、それとも辞めてフリーランスとして業務委託で働くかを妊娠中〜育休中のうちから考えはじめている方が多いのではないかと思います。Wedding Me Works のご相談される方の内容でも、この層が一番多いです。
しかもご相談の動機は、必ずしも「家計が厳しいから収入を作りたい」というわけではなく、多くの方に共通するのは「ブライダルの仕事自体は好きだから業界との接点は持ち続けたい。ただ正社員のフルタイム勤務は子育てとの兼ね合いで現実的に難しい」という事情です。完全に業界を離れるのも違うし、フルタイムで戻るのもしんどい、という間の選択肢を探している。
この二択で悩む方がよく挙げる比較軸は、おおまかに以下の5つです。
-
契約形態と働き方の自由度:
雇用契約は「働く時間と業務範囲を会社に提供する」、業務委託は「成果を提供する」という構造の違い -
収入の安定性:
正社員は固定給、業務委託は案件発注ごとに変動 -
拘束時間:
正社員時短勤務は時短といっても固定スケジュール、業務委託は自分で稼働日を選べる代わりに案件ごとに稼働時間は異なる -
子育てとの両立しやすさ:
時間帯・休みの取りやすさ・突発的な子供の体調不良への対応 -
キャリアの継続性:
現場感覚をどう保つか、ブランクをつくらない働き方
判断軸や選択は人それぞれではあるものの、復帰してからフルタイム正社員で頑張り続けるのか、それとも完全にフリーランス独立するのか、という二択ではなくて、1〜2年くらい業務委託で踊り場をつくって、その間に「自分はこの仕事のどこが好きで、どういう働き方が自分の生活に合うのか」を改めて確かめる方も最近少しずつ増えてきています。
また、数年フリーランスを経験した後に「フリーランスから正社員に戻る人も普通にいる」という方も増えてきています、いわゆる復帰勢。フリーランス→正社員のルートが増えている背景についてはこちらの記事で書いていますが、業務委託は「一度抜けたら戻れない一方通行」ではないと知っておくと、判断のハードルも少し下がるかなと思います。
ブライダル業界のなかで実際にどんな職種・雇用形態があるのかをもう少し俯瞰的につかみたい場合はこちらの記事を読んでみてください。

妊娠中・産休中に先に相談しておくとスムーズ
産休・育休中の業務委託について悩んで検索してくる方、特に妊娠中の方から「いますぐ動くつもりはないんですけど、相談だけしておきたい」というお問合せをよくいただきます。
「子供が生まれてからだと、時間も気持ちもゆとりがなくなりそう。だから比較的時間がある今のうちに、出産後の働き方の選択肢だけでも自分の中で固めておきたい。実際に動き出すのは生まれて落ち着いてからでいい。でも、何も知らないまま育児期間を過ごすのは怖い。」
Wedding Me Worksではこのような「まずは相談」のお問合せも受け付けており、実際に最初の相談から初稼働までは半年〜1年以上空くケースも普通にあります。
そう考えると、産休・育休中に直接的な業務委託案件を取りに行くより、妊娠中〜産休中という比較的時間が取れるタイミングで「出産後の働き方の方針を決めておく」とスムーズかなと思います。
具体的に妊娠中・産休中・育休中にやっておけることを時系列でおおまかに整理すると、以下のような方が多いイメージです。
-
妊娠初期〜中期:
いまの自分の働き方を客観視。正社員のままフルタイム・時短・退職してフリーランスのいずれが自分の生活設計に合いそうかをぼんやり考えはじめる -
妊娠後期〜産休:
業界エージェントやマッチングサービスに登録して、案件種別・報酬構造・契約条件などの情報収集。可能なら担当者と話してみて自分の経験で受けられそうな案件を聞いておく -
育休前半(0〜半年):
子供との時間が中心。判断は急がない -
育休後半(半年〜復帰半年前):
契約書・請求書・確定申告などの実務知識をゆっくり整える。保育園の確定や実家サポートなどの育児体制を固める時期と並行 -
復帰前後:
具体的な案件アサインの相談を始める。最初は段階的に、軽め案件から感覚を取り戻す
ちなみに、ブランク明けに業務委託でブライダル復帰する方は、いきなり新規接客や施行担当のような業績責任の重い案件には入らず、イベントや1日完結案件のような比較的小さい案件でまず感覚を取り戻して、慣れてきたら新規接客や施行担当に応募するという段階的なステップを踏む方が多いです。立ち上げ期間は3〜6ヶ月くらいといったところでしょうか。
子育てしながら業務委託で稼働している実例として、具体的にどんな1週間を過ごしているのかはこちらのインタビュー記事で語ってもらっているので、リアルな働き方のイメージをつかむ参考になると思います。
業務委託案件の探し方と、子育て層に合いやすい案件の組み合わせ
子育てと仕事復帰の両立考える際、稼働時間帯と稼働日数の制約は気になるところでしょう。「夕方には子供を迎えに行きたい」「土日のどちらかは家族の時間にしたい」「突発的な体調不良で稼働できない日が出る」など、制約はほぼ確実に増えます。
ブライダルの業務委託案件は案件種別ごとに稼働の時間帯が大きく違うので、自身のライフスタイルに合わせてうまく組み合わせることがポイントです。
-
新規接客:
午前のみ・午後のみのシフト提出&アサインも可能、半日単位でも組めるので、子育て層に合いやすい -
施行担当:
打合せ+当日施行+事務処理で時間が読みにくく、時間制約のある人には不向き -
イベント・1day案件:
17時頃には終わる案件が多く、また前もって予定が確定するので相性がいい -
在宅オンライン施行担当:
カップル側の都合さえ合えば、現場に出ずにオンラインだけで完結する案件もある
特に最後の在宅オンライン施行担当は、ここ数年で少しずつ広がっている案件種別で、子育てや介護で現場稼働が難しい時期にも仕事を続ける選択肢になります。

まとめ — 早めに考え始めるのが、キャリア観点でも経済観点でも◎
産休・育休中に業務委託契約は結べるか、というそもそもの問いに戻ると、結ぶこと自体は法律的には可能だけど、立場(雇用継続/転向後/フリーランス)で難易度がぜんぜん違う、というのが結論です。
「育休中にも稼げるか?」ももちろん大事ではあるのですが「育休明けにどう働くか」を妊娠中〜育休中のうちから考え始めておいて、急いで案件を取りに行くことなく動けるとよいと思います。そのためには、先に相談だけでもしておけるとスムーズです。
子供が生まれてからだと時間も気持ちもゆとりが減るので、自分の選択肢を整理する時間が取りにくい。産休・育休中に業務委託について悩む方の多くは、ブライダルの仕事自体は好きだけど正社員のフルタイム勤務は子育てとの兼ね合いで難しい、と考えています。
ただ、現代はフルタイム正社員と完全独立フリーランスの二択だけではなく、業務委託での働き方という新しい選択肢も広まってきているので、いったんフリーランスで1〜2年走ってみるとか、平日は他業界×週末は結婚式場の複業型で続けるとか、子育て期に合わせて時間帯指定の案件を中心に組み立てるとか、いろんな途中段階の選択肢があります。
契約を「結べるか結べないか」の二元論ではなく、自分の生活設計に業務委託をどう組み込めるか・どう組み込まないか、という方向で考えていけると、産休・育休のタイミングは案外いい振り返り時期になるのではないかと思います。
今回の記事ではあまりご紹介しませんでしたが、ウェディングプランナー経験者の業務委託案件での働き方に興味がある方、自分だったらどんな働き方ができるのかとお悩みの方は、ぜひお気軽にお問合せください。






































































































































