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2026/08/13

ブライダル業界の再編・M&A・倒産の動向一覧

ビジネス資料と新聞が置かれたテーブルの奥に結婚式場が見える業界動向のイメージ写真

こんにちは、アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

ここ数年、ブライダル業界では会社や式場の倒産やM&A関連のニュースが増えました。ノバレーゼとエスクリの経営統合のような業界の勢力図が変わる大型案件から、会場単位の事業譲渡、そして倒産まで。ただ、これらの情報は発表のたびに個別に流れていくだけで、業界全体でいま何が起きているのかをまとめて振り返られる場所がほとんどありません。

今回は、ブライダル業界の再編・M&A・倒産の主要な動きを一覧に整理し、あわせて「なぜ続くのか」「現場はどうなるのか」の見方を解説します。この記事は動きがあるたびに追記していく更新型の記事にする予定です。

ブライダル業界の再編・M&Aの一覧

最初に用語だけ整理しておくと、ここでいう再編・M&Aには、株式を買い取って子会社にする「買収」、複数の会社が1つになる「経営統合・合併」、経営陣が自社の株式を買い取って独立する「MBO」、会社ごとではなく特定の式場や事業だけを売り買いする「事業譲渡」、そして上場企業が市場から退出する「上場廃止」やその逆の「再上場」が含まれます。ニュースの見出しはどれも「買収」や「M&A」とまとめられがちですが、スキームによって現場への影響はかなり違うので、区別して読めるようになっておくと業界ニュースの解像度が上がります。

2026年

  • ノバレーゼ × エスクリが経営統合、新会社「オンザページ」が発足(4月):
    ノバレーゼを存続会社とする吸収合併で、エスクリ株は3月30日に上場廃止。合併後の連結売上高は470億円規模の見込みと公表されており、業界最大級のブライダルグループが誕生しました。両社の親会社は貸会議室大手のティーケーピー(TKP)で、この統合は次の2025年の項で書く一連の資本取引の集大成です
  • 燦ホールディングスがこころネットを完全子会社化(2月):
    葬祭大手の燦HDが、福島で冠婚葬祭事業を展開するこころネットを株式交換で完全子会社化。こころネットは上場廃止となりました。主軸は葬祭の再編ですが、結婚式場・貸衣裳を含むグループが大手の傘下に入った例です

2025年

  • TKPがエスクリを段階的に取得し連結子会社化(1月〜11月):
    1月に種類株式を取得し、6月に創業者から株式を譲り受けて筆頭株主になり、11月に議決権53.76%まで引き上げて連結子会社化。同日にノバレーゼとの合併契約締結を発表しました。約1年かけて布石を打っていく、教科書のような段階取得です
  • IBJがデコルテ・ホールディングスをTOBで連結子会社化(12月):
    婚活最大手のIBJが、フォトウェディング大手のデコルテHDへの公開買付けを実施し親会社に。婚活からフォトウェディングまでを取り込む垂直統合の動きです
  • CRAZYがスタイルズから横浜マリンタワーのウエディング事業を承継(12月):
    プロデュース型のCRAZYが「MARINE TOWER
    WEDDING」とレストランの運営を引き継ぎ、2026年6月にリニューアルオープン。プロデュース会社が施設運営に踏み込むケースです
  • テイクアンドギヴ・ニーズがエルフラットから名古屋2会場を譲受(11月):
    岐阜のエルフラットから「インフィニート名古屋」「トリフォーリアNAGOYA」の2会場を事業譲受。名古屋エリアの直営会場とのシナジーを狙った、会場単位の買収です
  • THE WHY HOW DO COMPANYがスティルアンを子会社化(9月):
    エンタメ・IT系の上場企業が、浜松で婚礼衣裳・挙式会場・宴会を手がけるスティルアン(売上約14億円)を100%子会社化。完全な異業種からの参入例です
  • GENDAがスタジオキャラットを完全子会社化(8月〜10月):
    エンタメ企業のGENDAがフォトスタジオ大手キャラット(108店舗)を取得。七五三・成人式が中心ですがウェディングフォトも含む、周辺領域の再編です
  • くふうカンパニーグループがヤッターホールディングスを子会社化(8月):
    「みんなのウェディング」を傘下に持つくふうグループが、リゾートフォトウェディングの会社を取得。媒体運営企業がリアルのフォト事業を取り込む動きです
  • エスクリがスタイルズから「KIYOMIZU京都東山」「ラソール
    ガーデン・名古屋」を譲受(8月)
    :
    京都・名古屋の有力ゲストハウス2施設とレストランの事業譲受。統合を控えたエスクリ側の施設網拡充です。売り手のスタイルズはこの年、横浜マリンタワーの事業承継と合わせて会場運営を相次いで手放した形です
  • JPiXがクレ・ドゥ・レーブを買収(1月):
    投資・事業承継プラットフォームの日本共創プラットフォーム(JPiX)が、神戸・大阪で8施設を運営するクレ・ドゥ・レーブの全株式を取得。こちらも異業種・投資会社系の買い手です

2024年

  • TKPがノバレーゼをTOBで連結子会社化(12月):
    6月に資本業務提携で持分法適用としてから半年でのTOB実施。貸会議室・宴会場の運営会社が式場運営大手を傘下に収めたこの案件が、2026年のオンザページ誕生まで続く一連の再編の起点になりました
  • クラウディアホールディングスがブライダルハウス島田を子会社化(6月):
    婚礼衣裳大手のクラウディアが宮崎トップクラスの貸衣裳会社を取得。2023年の二条丸八(婚礼和装)取得に続く、衣裳領域の集約の動きです

TKPによるノバレーゼ・エスクリの段階取得からオンザページ誕生までの時系列を整理した図解

2016年から2023年の主要な再編

少しさかのぼって、現在の業界地図を形づくった主要案件も押さえておきます。

  • ノバレーゼのMBOと再上場(2016年・2023年):
    2016年に投資ファンドと組んだMBOで非公開化し、収益改善を進めて2023年6月に東証スタンダードへ再上場。「非公開化して構造改革し、再上場する」というモデルケースになりました
  • ワタベウェディングが興和の完全子会社に(2021年):
    コロナ禍で海外挙式が消滅し、私的整理(事業再生ADR)を経て名古屋の興和がスポンサーに。20億円の出資を受けて上場廃止となりました。コロナ期の業界再編を象徴する案件です
  • 千趣会が婚礼事業を売却、その後ディアーズ・ブレインは経営陣が独立(2021年・2023年):
    通販の千趣会がゲストハウス大手ディアーズ・ブレインなどを投資ファンドへ譲渡し、2023年12月には経営陣が全株式を買い取るMBOで独立。親会社の多角化事業として持たれていたブライダルが切り離されていく流れの典型です
  • テイクアンドギヴ・ニーズが海外挙式子会社を売却(2020年):
    海外・リゾート挙式のグッドラック・コーポレーション(売上111億円規模)をケングループへ譲渡。渡航需要が消えた局面での撤退で、T&Gが国内事業へ集中する転換点になりました
  • ポジティブドリームパーソンズがホテル運営会社と資本提携(2021年):
    プロデュース大手のPDPがホテルマネージメントインターナショナル(HMI)の資本を受け入れて再建。エスクリもこの時期にSBIホールディングスと資本業務提携(2020年)しており、コロナ期は各社が資本増強に動きました
  • デコルテ・ホールディングスが上場(2021年):
    フォトウェディング専業として東証マザーズに上場。挙式の代替としてフォト婚市場が拡大した時期を体現する案件で、2025年のIBJによるTOBにつながります
  • みんなのウェディングがくふうカンパニーへ(2018年):
    クチコミ媒体「みんなのウェディング」の運営会社がオウチーノと経営統合してくふうカンパニーが発足。媒体側でも資本の組み替えが起きていました

こうして10年分を並べると、コロナ前の再編は業界内の事業拡大や衣裳・フォトの領域集約が中心だったのに対し、コロナ以降は「資本増強・救済型」を経て、2024年以降は「異業種による取得」へと主役が明確に変わってきたことがわかります。

主要な倒産・撤退・廃業の一覧

ここからは市場からの退出側です。東京商工リサーチの調査では、2025年の結婚式場業の倒産は5件、休廃業・解散は13件で、合計18件と7年連続で新設法人数を上回っています。業界のマクロな縮小トレンドと式場数の推移は結婚式場数の推移と業界の未来の解説記事で詳しく書いているので、ここでは個社レベルの主要案件を新しい順に整理します。いずれも信用調査会社の公表情報・報道ベースの公開情報です。

  • コンパル(2025年5月・破産):
    大阪で式場紹介カウンターを展開していた1967年創業の老舗。負債約6.3億円。式場運営ではなく「紹介業」の破綻例で、媒体・カウンターへの送客構造の変化を映しています
  • アルカディア(2025年3月・破産):
    福岡・佐賀で式場5カ所を運営し、ピーク時売上46億円。負債は54億円超と、九州・沖縄の結婚式場運営会社では過去最大の倒産です。コロナ禍からの業績悪化に加え、雇用調整助成金の不正受給問題が決定打となり、100組以上の挙式予約がキャンセルになりました
  • かづ美(2025年3月・民事再生から破産へ移行):
    北陸3県で「ヴィラ・グランディス
    ウエディングリゾート」を展開していた北陸トップクラスの会社。2024年12月に民事再生を申請したもののスポンサーが現れず、破産に移行しました。負債約30億円。挙式直前のカップルへのキャンセル通告が大きく報道されました
  • フォーチュンヴェール(2025年・破産手続き):
    愛知・常滑の「ビアンカーラ・マリーナテラス」運営会社。予約客への突然の式中止通告が報道された後、破産手続きに入ったと報じられています
  • シャインほか関連2社(2023年8月・破産):
    山口県の式場「マリーズヴィル光」の運営会社と関連の写真館がグループで連鎖倒産。3社合計で負債約20億円。式場とフォトが一体で経営されている地方グループの典型的な破綻パターンです
  • メルパルク各施設の営業終了(2022〜2023年・撤退):
    倒産ではありませんが、日本郵政が所有しワタベウェディング子会社が運営していた全国のメルパルクが順次営業終了。東京・大阪・横浜など、婚礼・宴会需要の大きな受け皿だった施設群の退場です
  • ラビアンローゼ・ウインクル(2020年4月・民事再生):
    浜松の貸衣裳会社と式場運営会社が同時に民事再生を申請、負債は2社合計で約33億円。コロナ期のブライダル倒産の初期代表例で、事業は後にスポンサーへ承継されました

1点補足しておくと、「経営危機」と「倒産」は混同されがちですが別物です。前セクションのワタベウェディングは事業再生ADRという私的整理で、法的な倒産手続きではなくスポンサーの下で事業を続けていますし、コロナ期に債務超過で上場廃止の危機が報じられたタメニー(旧パートナーエージェント)も、その後債務超過を解消して上場を継続しています。社名で検索して「潰れる」といったサジェストが出てくる会社でも、実際には資本増強や再編で切り抜けているケースは多く、だからこそスキームを区別して読む意味があります。

なぜブライダル業界で再編と倒産が続くのか

ブライダル業界は婚姻数の減少で市場全体が縮小していく一方、結婚式場は建物と設備に大きな投資をして運営する装置産業で、地代家賃・減価償却・正社員人件費といった固定費が重い。稼働が落ちると利益が急速に薄くなり、赤字と債務超過に向かいやすいコスト構造です。このあたりのPL構造はブライダル業界の利益率と式場決算の読み方の解説記事で詳しく書いています。

ではなぜ「退出」だけでなく「再編」がこれだけ増えているのか。私は、売り手側と買い手側の条件がちょうど噛み合っているからだと見ています。

まずブライダル業界内には、他社を買えるだけの財務体力を持つ会社がほとんど残っていません。スタイルズから会場単位で譲り受けたエスクリ(現オンザページ)や、エルフラットの名古屋2会場を取得したテイクアンドギヴ・ニーズのような大手くらいで、中堅以下の会社に買収の余力はないのが実情です。

一方で異業種から見ると、ブライダルは新規で参入するより「会社ごと・会場ごと買う」方が圧倒的に早くて安い。式場をゼロから建てれば数億円から数十億円の投資と数年の期間がかかりますが、買収なら施設・スタッフ・進行中の受注残まで一度に手に入ります。TKPやJPiXのような異業種・投資会社系の買い手が続いているのは、「業界内に買い手がいない」ことと「外から見れば買収の方が合理的」であることの、双方の条件が合致しているからです。倒産と再編は別々の現象ではなく、同じ構造から出てくる2つの出口だと捉えるのが正確だと思います。

業界内の売り手側の事情と異業種の買い手側の事情が合致して再編が起きる構造を整理した図解

買収や統合が起きると式場と現場はどうなるのか

M&Aは性質上、極めて内密に進められます。情報が事前に漏れれば取引自体が壊れかねないので、発表当日まで現場に知らされないのはむしろ正常な進め方です。だから「ある日突然、会社の持ち主が変わる」というのは現場目線では実態そのもので、事前に察知できなかったことで落ち込む必要はありません。倒産の場合はさらに突然性が強く、アルカディアやかづ美のケースでは進行中の挙式予約のキャンセルという形で顧客と現場に影響が及びました。

では買収・統合された後はどうなるのか。処遇や条件の変化を心配する声が出やすいところですが、もともといたスタッフが残るかどうかが大きなポイントになります。買収後は時間をかけて買った側の会社のルールへ寄せていくことになりますが、そのスピードと進め方は、既存メンバーがどれだけ残っているか次第で大きく変わります。文化ややり方の違いによるハレーションは当然起こるものの、その難易度は進め方次第でかなり変わる、というのが実際に見てきた印象です。

逆に言えば、買収する側にとっても現場スタッフの残留は統合の成否を左右する最重要変数であり、「買収されたら現場は切られる」という単純な図式は、労働集約型でスタッフの経験がそのまま商品の質になるこの業界では成り立ちにくいと言えます。

今後の再編はどこで起きるのか

私は、次に売り手になりやすいのは「集客はできているが利益が出ていない会社」だと考えています。集客力や施設に魅力があるのに利益が残っていない会社は、オペレーションやワークフローの改善で利益率を引き上げられる余地が大きく、買い手から見て最も投資妙味があるからです。逆に集客そのものが崩れている会社は、買収ではなく退出に向かいやすい。

買い手としてまず有力なのは、すでに異業種からブライダル企業を取得した会社です。TKPにしてもJPiXにしても、1社買って終わりではなくグループとしての規模拡大を戦略に掲げており、追加取得の動機があります。テイクアンドギヴ・ニーズやツカダ・グローバルホールディングのような業界大手が好条件の案件を個別に拾う動きも続くでしょう。ただし後者は運営受託という選択肢もあるかもしれません。

一方で、小規模事業者同士が合併して生き残るという再編は、ほぼ起こらないと見ています。合併しても固定費構造と集客力が改善するわけではなく、統合コストだけがかかるからです。中小の式場運営会社にとって現実的なシナリオは、独自のポジションを磨いて単独で残るか、大手・異業種グループの傘下に入るかの二択に近づいていくと思います。

今後のブライダル業界再編における売り手と買い手の条件を整理した図解

まとめ

ブライダル業界の再編・M&A・倒産の主要な動きを一覧で整理してきました。市場が縮小する装置産業では、退出と再編は避けられない構造変化であり、2024年以降はその主役が異業種の買い手に移っています。

自分の会社が当事者になるかどうかはさておき、こうした動きは業界のニュースとして知っておくといいと思います。持ち主が変わった式場がその後どう変わっていくのか、どんな会社が買い手として入ってきているのか。一覧で眺めていると、業界がどこへ向かっているのかが個別のニュースを追うだけよりずっとよく見えてきます。この記事は今後も動きがあるたびに追記していくので、業界の定点観測としてたまに見に来てもらえたら嬉しいです。

今回の記事ではほとんどご紹介しませんでしたが、ウェディングプランナー経験者の業務委託案件での働き方に興味がある方、自分だったらどんな働き方ができるのかとお悩みの方は、ぜひお気軽にお問合せください。

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