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2022/11/21

個人事業主とは?個人事業主になるための開業届とは?フリーランスのウェディングプランナーが開業届の提出手続きやメリットについて紹介

「個人事業主」とは、どういう方々を指すのでしょうか。一般的には会社をやめて独立開業した人をイメージする場合が多いかもしれません。では、特定の企業や団体との雇用関係を持たずに、個人として独立して仕事を請け負うという「働き方」をしている「フリーランス」や「自営業者」とは、なにが異なるのでしょうか。

個人事業主とは、株式会社などの法人を設立せず、税務署に開業届を出すことで「税務上の区分」として個人で事業を営む人を指しています。

税法上の区分である個人事業主と、よく似た言葉であるフリーランス・自営業者とのニュアンスの違いや、開業届を提出して個人事業主になる手続きをするメリットについて解説します。

 

個人事業主とは?フリーランスや自営業者と違うの?

個人事業主は、「個人」で「事業」を営む人です。

「事業」は反復・継続・独立して行う営利活動であり、「個人事業主」は税法上の区分であり、「開業届」を出して所得を申告する、継続して事業を営む個人を意味します。

法人税を納める「法人」や「会社」に対しての言葉であり、「個人」として「事業」を行なって税金を納める方が「個人事業主」と捉えるとわかりやすいかもしれません。

個人事業主は、経理、雑務まで、一つの会社が司る業務のすべてを一人の個人がこなす独立した事業体といえるでしょう。会社をやめて個人で独立する方や、何か新しい事業を個人でスタートする方は、まさに個人事業主です。

フリーランスと個人事業主

特定の会社や組織に属さずに仕事をする「働き方」に焦点をあてている言葉がフリーランスです。

フリーランスは、法律上の定義が定まった言葉ではありません。特定の雇用契約を結ばずに、会社から独立した立場で、請負や業務委託など様々な契約を結びながら仕事をするスタイルを広く意味している場合が多いです。

政府が発表しているガイドラインでは、フリーランスは「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」を仮に指すとされています。

自分で自由に働く時間や休みを決められる個人事業主の方は、フリーランスです。

もっとも、飲食店など実店舗で事業をしている個人事業主は、働く場所と時間に制限があるため、フリーランスと呼ばず「自営業」と呼ばれる場合が多いでしょう。

参照:「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン・令和3年」/厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000759477.pdf

自営業者と個人事業主

自営業者は、会社に所属して給料を得るサラリーマン以外で、自分で店舗や事務所をかまえて事業を行う人の総称です。

自分で事業をして収入を得ている人全般を広く指しますので、個人事業主であれば自営業者にもあたります。自営業者は、法人化した経営者も含む、非常に意味の広い言葉です。

誰かに雇われて給与をもらう方法以外の稼ぎで生計を立てている方を広く指すと考えて構わないでしょう。

 

開業届を提出して個人事業主になろう

開業届は、個人事業の開始を税務署に伝える書類で、正式名は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。開業届は、人でいえば出生届にあたり、所得税法により事業開始から一ヵ月以内に提出しなければいけません。

もっとも、開業届を出さなくても特に罰則はなく、税務署に開業した年の事業収支をまとめて確定申告しても受理される扱いとなっています。

とはいえ、事業を始めた記録を明確に残すためにも、開業届の提出をおすすめします。

開業届の記載内容や注意点

開業届の用紙は、国税庁のWebサイトからダウンロードするか、最寄りの税務署でもらって手に入れましょう。

提出方法は、納税地(住所地)を所轄する税務署への持参もしくは郵送、e-Taxによる電子申請です。

開業届の記載内容について、以下で簡単に解説します。

納税地その他個人情報

個人事業主の納税地は、海外に住んでいる方といった例外を除き原則として住所地となり、住所地の住所及び連絡先を記載します。

その他、住所地以外にも事業所がある場合にはその所在と連絡先、事業を行う方の氏名、生年月日、個人番号などを記載します。

屋号

屋号とは、個人事業主がビジネスの際に、本名以外や店の名前を名乗るために決める名称です。屋号の決定も、開業届への記載により可能となっています。

本名で業務を行う場合や、まだ屋号を決めていない場合は記載する必要ありません。

「〇〇法人」「〇〇会社」といった法人と誤認させる屋号は禁止され、登録済みの商標を使用すると法的トラブルの原因となりますので注意しましょう。

職業

職業については特に決まりがなく、客観的に判断できる職業ならば何を書いても大丈夫とされています。総務省の「日本標準職業分類」を参考にするのも良い方法です。

職業によって、年間290万円を超える所得があった場合に、個人の事業にかかる税金である事業税の税率が変わりますので、自分の職業がどの分類にあたるか確認しておくのも良いでしょう。

事業の概要

自分がやろうと思っている事業の概要をできるだけ具体的に説明しましょう。職業と同じく書き方に決まりはなく、何をやっているか分かれば十分です。

いろいろな事業を行う予定がある場合は、複数の事業を記載して構いません。世間で一般に認められている表現かどうか不安がある場合には、事前に税務署の方に相談するのもおすすめです。

その他届出に関する情報や、従業員に関する情報

開業届には、青色申告に関する選択届の有無、消費税に関する選択届の有無、従業員の雇用が決定している場合の情報の記載欄もあります。

青色申告を選択して「青色申告承認申請書」を提出する場合には届出「有」をチェックしましょう。消費税に関しては、年間売上が予測できる前ですから判断をひかえ、届出「無」にする場合が多いでしょう。

従業員に関する情報は必ず記載しなければならないわけではありません。開業届を出す時点では明確に定まっていない場合も多いでしょうから、空欄でも大丈夫です。

 

開業届を提出するメリットは?青色申告は副業でも可能?

開業届を提出すると、いくつかのメリットがあるため、事業を始める場合は忘れずに開業届を提出しましょう。

開業届をおこなったうえでのメリットの一つである青色申告についても簡単に紹介します。

個人事業主の立場を証明する書類になる

個人事業主としての立場を証明し、社会的信用を高めるために、開業届に税務署の収受印が押された書類が必要な場面があります。

開業資金や事業資金を金融機関から借り入れる場合や、事業用の口座を最初に作る際には、金融機関に開業届を提出して個人事業主となった事実を証明するのが一般的です。

事業開始一年目から青色申告が可能になる

個人事業主にとって色々なメリットがある青色申告をするためには、「青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければいけません。

※青色申告とは、国税庁の推奨する一定水準の帳簿を作成した上で、より正確な申告を行う確定申告方法。帳簿や書類作成の手間はかかるが、税金面で一定の優遇措置がある。

事業開始の一年目から青色申告を行うためには、「開業届」及び「青色申告承認申請書」両方の提出が必要となっています。

青色申告をすると、最大65万円の所得控除を受けて節税になるメリット、赤字が発生した場合に最大三年間繰り越し可能などのメリットがあります。

もっとも、複式簿記による帳簿の作成が難しいデメリットもあり、会計ソフトの導入もしくは税理士への依頼が必要になるでしょう。

サラリーマンの副業と青色申告

「サラリーマンが副業で事業をしている場合に、開業届及び青色申告承認申請書を提出し、個人事業主になって青色申告した方が良いのか」といった疑問がよく見受けられます。

副業の場合、収入額によって青色申告として認められないケースがある

まず、副業の場合には、税務署に事業所得として認められず、青色申告が利用できない可能性があるというハードルが存在します。

本業と同等の労力や時間をかけており、年間300万円を超える相当の安定した収入がない場合には、副業を事業として認めてもらえないのです。

青色申告にかける労力・費用が見合わないケースがある

次に、青色申告による節税でプラスになる金額と、会計ソフトの導入によってマイナスになる金額や労力、もしくは税理士報酬の支払いでマイナスになる金額を比べる必要があるでしょう。所得が高くない方であれば、青色申告による節税でのプラスの額はそこまで大きな金額ではないので、手間が増えるだけのケースもありえます。

本業で続けていく事業の場合には、将来を見据えて労力をかける価値があるため開業届を出しての青色申告を強く勧めますが、副業の場合はケースバイケースで考えたほうが良いでしょう。

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