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2022/12/22

個人事業主の方のインボイス発行事業者登録方法や手続きの流れと、免税事業者に認められる特例について解説!個人事業主ウェディングプランナーは登録必要?

個人事業主の方のインボイス発行事業者登録方法や手続きの流れ

インボイス制度の開始日である2023年10月1日が迫ってきました。

個人事業主の方がインボイスを発行するには、事前準備としてインボイス発行事業者となる必要があり、原則として2023年3月31日までに登録申請をしなければいけません。

インボイス発行事業者の登録申請方法や手続きの流れを解説すると共に、免税事業者が多い個人事業主の方向けとして、免税事業者に認められるインボイス制度に関連する特例について紹介します。

 

インボイス発行の事前準備であるインボイス発行事業者登録

2023年10月1日に、いよいよインボイス制度がスタートします。わかりやすく単純化して説明すると、インボイスとは一定の様式に従って作成された、正確な消費税額を証明する請求書です。

そして、インボイス制度とは、事業者に消費税の納付額の証明の一部としてインボイスを要求する、消費税納付に関する新しい方式といえます。

個人事業主の方がインボイスを発行するには、事前に国税庁に申請し、インボイス発行事業者として登録されなければなりません。

インボイスにはインボイス登録番号を記載する必要があり、インボイス発行事業者として登録番号を付与されて初めて、正式にインボイスを発行できるようになるのです。

それでは、インボイス発行事業者の登録方法について解説します。

 

インボイス発行事業者登録申請の流れ

事業者が、インボイス制度開始と同時にインボイス発行事業者となるには、原則として2023年3月31日までに所定の登録申請手続きをする必要があります。

郵送により書面を提出する書面申請による方法と、e-Taxを利用した電子申請による方法が選択可能です。

※例外として、2023年3月31日までに登録申請書を提出できない困難な事情がある場合に、2023年9月30日までの間に登録申請書にその困難な事情を記載し提出して、税務署長によりインボイス発行事業者の登録を受けたときは、2023年10月1日に登録を受けたとみなされます(改正令附則15)。

困難な事情については困難の度合いは問わないとする通達(インボイス通達5-2)も出されています。

申請書を作成し、書面を郵送する方法

①登録申請書をダウンロードし、必要事項を記載

まず、登録申請書をダウンロードし、必要事項を記載して書面を完成させましょう。

参照:国税庁PDF「適格請求書発行事業者の登録申請書」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/pdf/0022003-083.pdf

申請書の記載事項には次の項目があります。

  1. 住所(及び連絡先電話番号)
  2. 納税地(の住所及び連絡先電話番号)
  3. 氏名
  4. 申請書を提出する時点での事業者区分(免税事業者か課税事業者か)

住所と納税地は、国内に住所がある個人事業主の場合は原則として同じ住所地です。

免税事業者とは、基準期間(前々年の一年間)の消費税課税売上高が1,000万円以下であり、消費税の納税を免除されている事業者です。

課税事業者とは、免税事業者以外の、消費税を申告して納税する義務がある事業者です。

申請書を申請する時点において、免税事業者の場合には追加して次の項目も記載します。

  1. 個人番号
  2. 生年月日
  3. 事業内容
  4. 登録希望日

なお、免税事業者の方には後述する「消費税課税選択届出書提出を不要とする特例」があるため、事前に課税事業者の選択届出書を提出していなくても、インボイス発行事業者登録申請により、インボイス制度開始日・インボイス発行事業者登録日からの課税事業者への変更が認められています。

②所定のインボイス登録センターに郵送

次に、国税庁のWebサイトから住所地の都道府県を管轄するインボイス登録センターを確認し、完成した書面を所定のインボイス登録センターに郵送しましょう。

参照:国税庁Webサイト「郵送による提出先のご案内 各局(所)インボイス登録センターの管轄地域」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_yuso.htm

③登録通知書が住所に送付されたら登録完了

おおむね一か月程度の審査が行われた後に、登録番号などが記載された登録通知書が住所に送付され、登録完了となります。

インボイス発行事業者の情報は、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で公表されますので、登録番号を入力してみて自分の情報が正しく登録されているか確認できれば安心です。

参照:国税庁Webサイト「適格請求書発行事業者公表サイト」
https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/

e-Taxを利用した電子申請による方法

マイナンバーカードの電子証明書を持ち、e-Taxソフトを利用できる環境にある方は、電子申請による登録申請手続きも可能となっています。

・参照:国税庁Webサイト「e-Taxによる登録申請手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_shinei.htm?_fsi=YOrZNRl2

・参照:国税庁PDF「登録申請手続きのe-Taxに関するよくある質問」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/invoice_shinei10.pdf

e-Taxによる申請の場合は、審査が2週間程度と書面を郵送する方法より短めになるようですので、環境が整っている方は、電子申請を利用するのもおすすめです。

インボイス発行事業者の登録申請は難しい申請手続きではないですが、税理士による代行手続きも認められているため、自分で手続きをするのが面倒な方は税理士に依頼するのもよいでしょう。

 

インボイス制度開始に合わせて免税事業者に認められる特例

個人事業主の方の多くは、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の免税事業者であり、今まで消費税を納付してきませんでした。

しかし、免税事業者のままではインボイスを発行できないため、インボイス制度の開始と同時にもしくは制度開始後しばらく様子を見た後に、課税事業者となってインボイス発行事業者登録をしようと考えている個人事業主の方も多いでしょう。

免税事業者の都合を考慮し、2023年10月1日からもしくはそれ以降の約6年間に免税事業者が課税事業者になる場合を想定した、臨機応変な対応を認めるための特例がありますので、紹介します。

消費税課税選択届出書提出を不要とする特例

本来、課税事業者になるためには、課税事業者となる課税期間が始まる前日までに「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出しなければなりません。

そのままでは免税事業者であった個人事業主がインボイス制度開始に合わせて課税事業者になるには、2022年12月31日までに届出書を提出し、課税事業者になったうえでインボイス登録をしなければならなくなり、負担が大きくなってしまうのです。

そこで、免税事業者は、2023年10月1日から2029年9月30日までの日に属する課税期間であれば、消費税課税選択届出書の事前提出がなくても、インボイス登録事業者の登録申請による登録を受けた日から課税事業者となってインボイス発行事業者となれるとする特例が設けられました。

免税事業者がインボイスを発行できる課税事業者になりたい場合に長期間待つ必要をなくし、インボイス発行事業者登録と同時に課税事業者となれるようにしたのです。

簡易課税制度選択届出書の提出期限の特例

小規模事業者の負担軽減を趣旨とする簡易課税制度ですが、事業開始時などの例外を除き、適用を受けようとする課税期間の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しなければならないのが原則です。

・簡易課税制度:中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、事業者の選択により、売上に係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出できるとする制度

・参照:国税庁Webサイト「簡易課税制度」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm

原則通りの運用では、個人事業主である免税事業者が簡易課税を選択したい場合に、インボイス発行事業者となる前の年の12月31日までに届出をしなければならない負担が生じてしまいます。

そこで、免税事業者が2029年9月30日までの日に属する課税期間にインボイス登録をする場合には、課税期間中の届出によりその課税期間から簡易課税の適用を可能とする特例が設けられました。

免税事業者がインボイス発行のために課税事業者になる場合に、前年中に選択届出を出す必要なく、すぐに簡易課税を選択できるようになるのです。

この二つの特例は、免税事業者の負担を減らし、なるべく時間的猶予を与えて臨機応変な対応をしやすいようにする趣旨で認められる特例です。

特例の利用により、免税事業者は、インボイス発行事業者となるのか、簡易課税制度を利用するのか、しばらく様子見をしてインボイス制度開始の影響を見極めてから判断をする対応をとりやすくなるでしょう。

この記事を書いたライター

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